印刷版式の一つで、版面は平らであるが、化学的にインキのつく部分とつかない部分を形成したもの。石版印刷(リトグラフ)がこの印刷法の初めで、水と脂肪とが互いに反発する性質を利用し、インキのつく画線部は脂肪性とし、インキのつかない部分は化学処理によって親水性としてある。石版石は多孔質であり、脂肪によって特殊な性質をもつ物質であるが、金属も亜鉛やアルミニウムの表面に微細な凹凸(砂目)をつけることにより平版をつくれるようになった。平版の印刷は多くの場合オフセット印刷(一度ゴム布に印刷してから紙にインキを移す間接印刷)で、印刷の本筋であった凸版を凌駕(りょうが)した。その理由は、版材が安く、アルミニウム板をベースにした版などは曲げやすく、円筒の版胴に容易に取り付けられ、高速の輪転印刷ができること、大判でも軽量で取扱いが便利であり、写真製版が簡単に速くでき、カラー印刷にも適しているなどである。さらに、写真製版を容易にするため、版材にあらかじめ感光液を塗布した、いわゆるPS版(presensitized plate)がメーカーから供給され、製版所にはそのプロセッサー(現像機)も完備し、さほどの熟練を要せずに版ができるようになった。平版はカタログやポスターなどの商業印刷、新聞、雑誌、書籍の印刷などに広く利用されている。
コンピュータ技術の進歩によって通信と印刷が効率的に結び付けられるようになり、とくに新聞においてはデータから直接版上に焼付け製版を行うCTP(computer to plate)が利用されるようになった。
[山本隆太郎・中村 幹]
出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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