年少労働者(読み)ねんしょうろうどうしゃ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「年少労働者」の意味・わかりやすい解説

年少労働者
ねんしょうろうどうしゃ

労働法の保護対象下に置かれている一定年齢以下の労働者のこと。なお、現在では、年少労働者よりも低年齢の児童は、原則として労働者としての使用が禁止されている。

[湯浅良雄]

イギリスの工場法

古くから児童や年少者は徒弟制度のもとで雇用されていたが、その数において一定の限界があった。機械体系を基礎とする工場制度の成立は、筋力熟練を不用にすることによって、賃金の安い児童・年少者さらに婦人の大規模な雇用に道を開いた。機械の資本主義的利用は、彼らを激しい労働強化のもとで長時間働かせ、過酷な搾取の対象とした。このため、児童・年少労働者の肉体的・精神的荒廃が著しく進行し、大きな社会問題となった。

 これに対して児童・年少労働者や婦人を保護するための運動が発展し、その保護を目的とした工場法が成立した。イギリスでは、1802年に最初の工場法が成立するが、法的に整備されるようになったのは33年の工場法からである。この1833年工場法は、18歳未満の年少者の労働時間を1日12時間に制限するとともに、13歳未満の児童労働者の労働時間を1日8時間に制限し、さらに9歳未満の児童の雇用を全面的に禁止した。また、18歳未満の労働者は深夜業も全面的に禁止された。したがって、この時期のイギリス工場法によれば、13歳以上18歳未満が法的に年少労働者、13歳未満が児童ということになる。

[湯浅良雄]

日本の工場法

第二次世界大戦前の日本においても、1911年(明治44)3月に工場法が制定され、1916年(大正5)9月から施行されるようになった。これは、18歳未満の女子のみを対象に、労働時間を1日12時間に制限するとともに、深夜業を禁止し、さらに12歳未満の女子の雇用を禁止した。その後、1923年工場労働者最低年齢法の制定による最低年齢14歳の規定、1929年(昭和4)の工場法制定による婦人・年少労働者の深夜業の禁止規定などによって、若干保護施策も改善されるようになったが、例外規定も多く、わずかな保護規定もほとんど死文化の状態にあった。

[湯浅良雄]

労働基準法の保護措置

第二次世界大戦後制定された現行労働基準法(昭和22年法律49号)は、その肉体的・精神的諸条件を配慮して、一定年齢以下の年少労働者に対して特別な保護措置を定めている。すなわち、労働基準法は、その第6章「年少者」において、満15歳未満の児童(正確には15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでの者)の雇用を原則として禁止し、満18歳未満の年少者に特別の保護措置を規定している。したがって、日本の現行労働基準法によれば、満15歳以上で満18歳未満の者が年少者、満15歳未満が児童ということになる。

 年少労働者に対する具体的な保護措置を列挙するならば、変形8時間労働制の限定措置、労働時間・休憩特例の不適用、および休日労働の禁止(60条第1項)、深夜業の禁止(ただし、交替制で労働する場合は一定の規定内で認められている。61条)、危険有害業務での就業制限(62条)、坑内労働の禁止(63条)等々が定められている。

[湯浅良雄]

『松岡三郎著『労働法実務大系14 婦人・年少労働者』(1969・総合労働研究所)』『B・ハチンズ、A・ハリソン著、大前朔郎他訳『イギリス工場法の歴史』(1976・新評論)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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