改訂新版 世界大百科事典 「就業制限」の意味・わかりやすい解説
就業制限 (しゅうぎょうせいげん)
過度または不適当な就業に伴う危険から労働者の生命,身体,健康をまもるため,女子および満18歳未満の年少者については危険有害業務への就業制限をするほか(労働基準法63条),一般男子労働者についても,必要な資格をもたない者の危険業務への就業制限をしている(労働安全衛生法61条)。広義では,満15歳未満の児童の就業禁止(労働基準法56条1項),女子,年少者の坑内労働禁止(64条),産後5週間の就業禁止(65条2項)および病者の就業禁止(労働安全衛生法68条)を含む。
制限されている業務は次のとおりである。(1)女子・年少者は,運転中の機械,動力伝導装置の危険な部分の掃除,注油,検査,修繕をしたり,運転中の機械,動力伝導装置にベルト,ロープの取付けや取りはずしをしたり,動力によるクレーンの運転をする等の危険な業務に就くことや,または重量物を取り扱う業務に就くことができない。また年少者は毒劇薬,毒劇物その他有害な原材料を取り扱う業務,著しくじんあい,粉末を飛散しもしくは有害ガス,有害放射線を発散する場所または高温,高圧の場所における業務その他安全,衛生,福祉に有害な場所における業務に就くことができない。年少者の就業が制限される危険有害業務のうち,女子の就業も制限されるものがある。以上の就業制限に違反した使用者は処罰される。(2)免許,技能講習を受けるなど必要な資格をもつ者でなければ,政令で定める発破,揚貨装置の運転,ボイラーの取扱い,溶接,クレーン,移動式クレーン,デリック,フォークリフト,動力建設機械の運転,移動式クレーン,デリックの玉掛け等の業務に就くことができない。労働者がこれらの危険業務に従事する場合には資格証明書を携帯しなければならない。これらの規定に違反した使用者および労働者は処罰される。ただし職業能力開発促進法(旧職業訓練法)に基づく職業訓練には,例外措置が認められる。なお,これらの危険業務の多くについて,(1)の立法趣旨から,女子・年少者にはそもそも就業の資格が与えられない。
→児童労働・年少労働
執筆者:保原 喜志夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報