日本大百科全書(ニッポニカ) 「広告キャンペーン」の意味・わかりやすい解説
広告キャンペーン
こうこくきゃんぺーん
advertising campaign
ある明確な目的のもとに行われる、一連の特定期間における継続的、組織的広告活動。通常は所定の広告テーマを中心に、複数の媒体を同時的に使用し、短期間に大量の広告を出稿することによって、社会的な話題性を高める。広告キャンペーンは、その企業のマーケティング政策とは無関係ではないので、それらの関係者と事前に打ち合わせ、その政策と調整のうえ実行にあたるが、そのためには、まずキャンペーン目標を全社的に明確にする必要がある。キャンペーン目標には大別して4種類ある。第一は食品・飲料業界に多い新製品発売のための販売促進的目標、第二は自動車や流通業界に多いイメージ向上目標、第三は公共団体などに多い企業・事業活動への理解を求める企業・事業理解目標、第四は化粧品・繊維品業界に多い提案あるいは消費者教育目標、である。以上のそれぞれの目標に応じたキャンペーン・テーマが決定され、マス・メディアを動かすことになるが、そのためには次のような手順の全体的計画が必要とされる。
[島守光雄]
全体的計画
(1)広告キャンペーンに先だって、市場条件を調査し、これを基準にしてキャンペーンの到達すべき目標をあらかじめ数字で設定する。たとえば、前年度の15%増の売上高、25%増の知名度、あるいはマーケット・シェアの30%増、マインド・シェア(企業名や商品名が消費者の意識のなかに占める比率)の40%増、などである。
(2)広告キャンペーンに投下すべき予算を計上したならば、掲出する広告媒体の評価と選択を行う。その際には個別の媒体ごとの銘柄、スペースやタイムの大きさ、回数などを媒体特性を考慮して決め、最少の費用で最大の効果があげられるよう、メディア・ミックスを含む媒体戦略を立案する。他方では制作面の戦略としてはすでに決められた広告テーマに沿った方針に貫かれた広告コピーやアートに基づく広告物の制作を急がせる。制作が遅れて期間中に所定のテーマに基づくメッセージが順序どおりスムーズに流れないと意図が達成できないからである。
(3)新聞・雑誌のクリエーティブ作業、テレビ・ラジオのCMの作成、屋外広告、交通広告、ダイレクト・メール、POP広告、映画、スライド、ポスターなどの制作のめどがつくと、広告キャンペーン遂行のため、出稿計画をもとに広告主、広告会社、各媒体社との調整がなされ、広告活動が展開される。
(4)同時並行的に広告目標の効果的達成のため、PRテーマ、パブリシティー方法の時期についてPR会社の協力のもとに全体的計画に基づいたPR実施活動が行われる。
(5)さらに広告キャンペーンをフォローするセールス・プロモーション(販売促進)活動、たとえばタイアップ広告などによる卸店、小売店の販売促進援助策や展示会、イベントが計画され、実施される。そのためには広告キャンペーンの際には、系列傘下の卸店、小売店に対して一体化を図るための共通目標を明示しておく必要がある。
[島守光雄]
成果と評価
1960年代には異業種の広告主が組んだコンビナート・キャンペーンが流行したが、その後、地域を限定せずに全国的に広告する全国広告主が地方の販売店と組んだり、メーカーと販売店とが協同して行うタイ・インtie-in(共同)キャンペーンが主流となっている。1990年代には、セールス・キャンペーンと連動して行われる広告キャンペーン以外に、企業イメージの向上などのコミュニケーション目標を達成するために、広告活動主体で展開される広告キャンペーンが増えてきている。この場合には、キャンペーン期間が数年に及ぶことがあるので、その成果は年度などの時系列で長期にわたり指標化され、測定されることになる。合理的、科学的広告キャンペーンには、事前・事後の広告活動によって変化した消費者行動調査、実施前の広告メッセージの効果調査や媒体の広告効果測定などが組み込まれていなければならない。それは、広告キャンペーンは、それ自体が完結されたものではあるが、その成果と評価は次の広告計画に反映されるべきものであるからである。
[島守光雄]
『西尾忠久著『フォルクスワーゲンの広告キャンペーン』(1963・美術出版社)』▽『小林太三郎編『日本の広告キャンペーン』上・下(1965・誠文堂新光社)』