広域用ペニシリン剤（読み）コウイキヨウペニシリンザイ

病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版

広域用ペニシリン剤

製品名
《アモキシシリン水和物製剤》
アモキシシリン（辰巳化学、日本ジェネリック、東和薬品、日医工、日医工ファーマ、ニプロ）
アモリン（武田薬品工業、武田テバ薬品）
サワシリン（アステラス製薬）
パセトシン（アスペンジャパン）
ワイドシリン（Meiji Seika ファルマ）
《クラブラン酸・アモキシシリン水和物配合剤》
オーグメンチン（グラクソ・スミスクライン）
クラバモックス（グラクソ・スミスクライン）
《アンピシリン製剤》
ビクシリン（Meiji Seika ファルマ）
《バカンピシリン塩酸塩製剤》
ペングッド（日医工）
《スルタミシリントシル酸塩水和物製剤》
ユナシン（ファイザー）
ユナシン小児用（ファイザー）
《アンピシリン・クロキサシリン複合剤》
ビクシリンS（Meiji Seika ファルマ）

　細菌の細胞壁を破壊して、細菌を死滅させるはたらきのあるペニシリン系抗生物質のひとつです。

　グラム陽性菌・グラム陰性菌の両方の細菌（赤痢菌、大腸菌、変形菌、インフルエンザ菌、腸球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、ブドウ球菌、淋菌りんきんなど）によって引きおこされた感染症の治療に効果があり、ペニシリン剤のなかで、もっとも利用されている薬です。

　呼吸器の感染症（扁桃炎へんとうえん・咽頭炎いんとうえん・喉頭炎こうとうえん・猩紅熱しょうこうねつ・肺炎・気管支炎など）、目・耳・鼻の感染症（眼瞼膿瘍がんけんのうよう・麦粒腫ばくりゅうしゅ・外耳炎・中耳炎・副鼻腔炎ふくびくうえんなど）、歯の感染症（歯周組織炎・歯冠周囲炎しかんしゅういえん・抜歯後感染など）、泌尿器・尿路の感染症（腎盂腎炎じんうじんえん・膀胱炎ぼうこうえん・尿道炎・前立腺炎ぜんりつせんえん・子宮内感染など）、皮膚の感染症（瘭疽ひょうそ・癤せつ・癰よう・膿痂疹のうかしんなど）、性感染症（梅毒・淋病など）、乳腺炎にゅうせんえん、細菌性心内膜炎、腹膜炎、敗血症、炭疽病たんそびょう、関節炎、リンパ節炎といった感染症の治療や、やけどや手術後の二次感染の治療に使用されます。

　代表的なアンピシリン製剤は、古くからある天然型ペニシリン製剤に比べ、グラム陽性菌に対する効力は弱くなっています。

　アンピシリン製剤を改良し、消化管吸収を高めたものがバカンピシリン塩酸塩製剤です。

　スルタミシリントシル酸塩水和物製剤は、長期に使用しても効果がなくならないようにした薬で、とくに治りにくい、呼吸器や尿路におこった感染症の治療に使用されます。

　アモキシシリン水和物製剤は、消化性潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリ菌の除菌の補助、胃MALTリンパ腫・特発性血小板減少性紫斑病・早期胃ガンに対する内視鏡的治療後のヘリコバクター・ピロリ感染症にも使用されます。アモキシシリン水和物にクラブラン酸を配合したクラバモックスは副鼻腔炎の治療にも用いられます。

　さらに、2つのペニシリン剤（主としてアンピシリン製剤と耐性ブドウ球菌用ペニシリン剤）とを合わせた複合剤もあります。

①過敏症状（発疹ほっしん・発熱・かゆみなどのアレルギー症状）、ショック、急性腎障害、偽膜性大腸炎をおこすことがあります。これらの症状が現れたときは服用を止め、すぐ医師に相談してください。

　そのほかにアモキシシリン水和物製剤では、アナフィラキシー、中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、多形紅斑、急性汎発性発疹性膿疱症、紅皮症（剥奪性皮膚炎）、顆粒球減少、血小板減少、肝機能障害、黄疸、間質性肺炎、好酸球性肺炎、無菌性髄膜炎が現れることがあります。

　アンピシリン製剤では、アナフィラキシー、中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、急性汎発性発疹性膿疱症、溶血性貧血、無顆粒球症、急性汎発性発疹性膿疱症が現れることがあります。

　バカンピシリン塩酸塩製剤では、アナフィラキシー、中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、急性汎発性発疹性膿疱症、紅皮症（剥奪性皮膚炎）、出血性大腸炎、肝機能障害、黄疸、急性汎発性発疹性膿疱症が現れることがあります。

　クラブラン酸カリウム・アモキシシリン水和物配合剤では、アナフィラキシー、中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、多形紅斑、急性汎発性発疹性膿疱症、紅皮症（剥奪性皮膚炎）、出血性大腸炎、顆粒球減少、血小板減少、無顆粒球症、肝機能障害、黄疸、間質性肺炎、好酸球性肺炎、無菌性髄膜炎が現れることがあります。

　スルタミシリントシル酸塩水和物製剤では、アナフィラキシー、中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、急性汎発性発疹性膿疱症、紅皮症（剥奪性皮膚炎）、間質性腎炎、出血性大腸炎、顆粒球減少、血小板減少、溶血性貧血、肝機能障害、黄疸が現れることがあります。

　これらの症状が現れたときは服用を止め、すぐ医師に相談してください。

②下痢、吐き気、腹痛、食欲不振、口内炎などの症状が現れることがあります。このような症状が現れたときは、医師に報告してください。

　服用後、口内の異常（口の渇き・痛み・ただれなど）、めまい、耳鳴り、発疹、頻繁な便意、喘鳴ぜんめいなどの症状がおこったときはショック症状の前兆のこともあるので、服用を止め、すぐ医師に相談してください。

①いろいろな剤型がありますが、食後の服用が原則です。クラバモックスは、食直前の服用が原則です。1日あるいは1回の服用量、服用時間については、医師の指示をきちんと守り、かってに中止、減量・増量しないでください。

②以前にペニシリン系の薬でショック症状をおこしたことのある人、伝染性単核症のある人は、この薬は使用できません。また、クラブラン酸・アモキシシリン製剤では、薬の成分で黄疸、または肝機能障害をおこしたことがある人は使用できません。

③以前にセフェム系抗生物質で過敏症状をおこしたことのある人、両親やきょうだいにアレルギーのある人は、あらかじめその旨を医師に報告してください。

④肝臓・腎臓じんぞうに障害のある人、内服の不良な人または非経口栄養の人、フェニルケトン尿症の人、妊婦あるいは現在妊娠している可能性のある人は、病状を悪化させたり、胎児に悪影響を及ぼすこともあるので、あらかじめその旨を医師に報告してください。

⑤高齢者は副作用が出やすいので、使用に関して細かく注意されます。医師の指示通り、正しく服用してください。

出典　病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版