広東(省)(読み)かんとん

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

広東(省)
かんとん / カントン/コワントン

中国南部、南シナ海に面する省。北は湖南(こなん/フーナン)・江西(こうせい/チヤンシー)両省、東は福建(ふっけん/フーチエン)省、西は広西(こうせい/カンシー)チワン族自治区に接する。大陸部のほか、南シナ海に散在する東沙(とうさ/トンシャー)群島などの島を含む。住民は漢族のほかにリー、チワン、ミャオ、ヤオ、ショオなどの少数民族が居住している。面積17万8159平方キロメートル、人口7498万5404(2000)。省都は広州(こうしゅう/コワンチョウ)。ほかに韶関(しょうかん/シャオコワン)、深(しんせん/シェンチェン)、珠海(しゅかい/チューハイ)、汕頭(スワトウ)、仏山(ぶつざん/フォーシャン)、江門(こうもん/チヤンメン)、茂名(もめい/マオミン)、湛江(たんこう/チャンチヤン)など21の省直轄市がある(県級市は31)。
 地形は全体的に北から南に傾斜し、全省の3分の2は山地と丘陵であり、これらは北部、東部、西部の三つの部分に分けられる。山地の主体をなす北部は、南嶺(なんれい/ナンリン)の一部である大(だいゆれい)、騎田嶺(きでんれい)など標高1000~1500メートルの山脈で、最高峰は石坑(1902メートル)。長江(ちょうこう/チャンチヤン)(揚子江(ようすこう/ヤンツーチヤン))、珠江(しゅこう/チューチヤン)の二大水系の分水界をなし、山中の小梅関などの峠は古来南北交通路として利用されてきた。東部は、北東から南西に走る1000メートル前後の九連(きゅうれん/チウリエン)山脈などの山脈が並行し、その間に盆地が横たわる。西部も1000メートル前後の山脈が走り、南は雷州(らいしゅう/レイチョウ)半島が南部に突出する。最大の平野は珠江デルタで、ついで韓江(かんこう)デルタがある。海岸の多くは山脈が迫るため岩石海岸が多く、湾入に富んでいる。気候は高温多雨で、北部山地を除いて最低気温は10℃以上、年平均気温は20℃以上である。年降水量も大部分が1500ミリメートル以上であるが、4~9月の雨期に集中する。またこの間に台風の襲来を受けることが多い。
 高温多雨の気候に恵まれるため、大部分の地域で1年三毛作が可能である。食糧作物については一般に、米の二期作と冬のサツマイモ栽培とを組み合わせたものが多く、一部は米の三期作もみられる。また、丘陵部ではトウモロコシ栽培も盛んである。経済作物では珠江デルタ、韓江デルタを中心に広くサトウキビが植えられ、全国最大の生産量を誇り、丘陵部のラッカセイの生産も全国第3位である。熱帯、亜熱帯性作物の多いことも顕著な特色で、サトウキビのほか、柑橘(かんきつ)類やパパイヤ、バナナ、パイナップル、レイシ、リュウガンなどの熱帯果実が広く栽培され、雷州半島ではココヤシ、ゴム、サイザルアサ、香水ガヤも栽培される。山地にはマツ、スギを主とする用材林が繁茂し、コルク、松脂(まつやに)、椿油(つばきあぶら)、桐油(とうゆ)、ワニス、漢方薬剤など林産物も多種類に上る。沿岸部では水産業が盛んで、漁獲量は山東(さんとう/シャントン)、浙江(せっこう/チョーチヤン)両省ほどではないが、汕尾(さんび)、甲子、澳頭(おうとう)、香州などの漁港があり、珠江デルタでは淡水魚の養殖も非常に盛んである。また、家禽(かきん)の飼育も全国で首位を占めている。飼育しているウシはすべて水牛である。
 工業についてはかつて、中国沿海部各省のなかでは、工業の発達が比較的遅れた省に属していた。1950年代までは鉄鋼、化学肥料、石油関係の近代工業はゼロに近く、50年代以降も製糖、製紙、絹織物、製塩などの軽工業を主力としていた。地下資源も非鉄金属のタングステン、錫(すず)、硫化鉄などは多いが石炭は貧弱であった。また沖合いの海底油田もまだ開発されず、わずかに茂名に豊富にあった油母頁岩(ゆぼけつがん)(オイルシェール)から人造石油を加工していただけであった。
 1980年代以後、改革・開放政策がとられるようになって、外資を導入して近代的先進工業都市を建設するために1979年に設定された4経済特区に、域内の深、珠海、汕頭の3地区が含まれ、さらに広州、湛江が経済技術開発区に指定されるなど、開放経済に基づいた工業技術の近代化が推進された。その結果、扇風機、電気冷蔵庫、電気洗濯機、カラーテレビなどの家電製品の生産高が全国第1位となったのをはじめ、珠江河口沖合いの海底油田開発基地として深の蛇口(だこう)が重要な役割を演じ、茂名も北部湾(トンキン湾)の海底油田から送られる原油の製油と石油化学の工業基地となった。とくに深は国際的な貿易センターとして高層ビルが林立し、香港(ホンコン)と変わらぬ近代都市に変貌している。伝統工芸も盛んで、広州の象牙(ぞうげ)細工、仏山の絹布、陶器、汕頭の刺しゅうは海外まで広く知られている。また農村の小型水力発電所は全国最多で、農村電化が進んでいることでも有名である。
 交通面では京広(けいこう)鉄道と、広州―深―九竜(きゅうりゅう/チウロン)を結ぶ広九鉄道以外は、広西チワン族自治区からの黎湛(れいたん)鉄道が開放後敷設されただけであったが、ようやく鉄道敷設が進み、広州から西の三水(さんすい/サンショイ)経由で茂名までの広茂鉄道と、東の竜河から梅州、汕頭までの鉄道が敷設された。さらに1997年には北京(ペキン)と香港を直結する京九(けいきゅう)鉄道が竜河経由で開通したことにより広州―竜河以東が接続した(広梅汕鉄道)。また珠江デルタ上の珠海―虎門(こもん/フーメン)―深を結ぶ高速道路と虎門珠江大橋の開通をみた。広州の白雲山空港は国内のほか東南アジアとも連絡している。[青木千枝子・河野通博]

世界遺産の登録

中国には40あまりの世界遺産が存在するが、この広東省では「開平の望楼群と村落」(2007年、文化遺産)、「中国丹霞(たんか)」(2010年、自然遺産)の一部としての丹霞山がユネスコ(国連教育科学文化機関)により世界遺産に登録されている。[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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