改訂新版 世界大百科事典 「延暦儀式帳」の意味・わかりやすい解説
延暦儀式帳 (えんりゃくぎしきちょう)
《伊勢太神宮儀式》《太神宮儀式》また《太神宮儀式帳》などとも呼ばれる。804年(延暦23)伊勢の内宮・外宮それぞれの禰宜・大内人らが執筆し,神祇官の検校を経て太政官へ提出した解文(げぶみ)で,内宮側の《皇太神宮儀式帳》,外宮側の《止由気宮(とゆけぐう)儀式帳》の2部よりなる。いずれも伊勢神宮関係記録中の最古のもので,《皇太神宮儀式帳》には,その鎮座由来,殿舎,三節祭の朝夕大御饌(おおみけ),遷宮の用物・装束,遷宮行事,所管神社,禰宜・内人・物忌ら職員の職掌,度会(わたらい)・多気・飯野の神三郡の沿革・経営,御調・荷前(のさき)供奉,幣帛,年中行事など23条について詳細に記され,《止由気宮儀式帳》には鎮座由来より,殿舎,朝夕大御饌行事,遷宮用物および装束,遷宮行事,所管神社,禰宜・内人・物忌らの職掌,年中行事など9条について,また詳しく記されている。のちの《延喜式》巻四の伊勢太神宮式と比べてみると,その制とほとんど一致し,あるいはその《延喜式》の祖型《弘仁式》制定の基礎として提出を命ぜられ,記されたものかとみられる。いずれにせよ,律令全盛時代の整備された神宮の状況,それも一朝にして成ったものとみられず,すでにそれまでの長年月のあいだに整備されていた神宮の状況をみる上での根本史料であり,現在の神宮諸制にも本書を基礎としているところが多い。注釈書に江戸時代の中川(荒木田)経雅編《大神宮儀式解》30巻,橋村正兌編《外宮儀式解》4巻がある。《群書類従》に収める。
執筆者:鎌田 純一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報