引返す(読み)ヒキカエス

デジタル大辞泉 「引返す」の意味・読み・例文・類語

ひき‐かえ・す〔‐かへす〕【引(き)返す】

[動サ五(四)]
進んできた道をもとへ戻る。ひっかえす。「途中で―・す」
もとの状態に戻る。昔のようになる。
「まだ(琴ノ)調べも変はらず、―・し、その折、今の心地し給ふ」〈松風
繰り返す。反復する。
御文を、うちも置かず―・し―・し見ゐ給へり」〈宿木
裏返す。ひっくりかえす。
「畳、ところどころ―・したり」〈須磨
すぐにもとへ戻す。折り返す。
「―・し一筆書きて助光が手に渡し給へば」〈太平記・二〉
連用形を副詞的に用いて)うってかわって。
「とけ難かりし御気色をおもむけ聞こえ給ひて後、―・しなのめならむは、いとほしかし」〈夕顔
[類語]帰る戻る折り返す取って返すきびすを返す折り返しとんぼ返りターンユーターン回れ右

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「引返す」の意味・読み・例文・類語

ひき‐かえ・す‥かへす【引返】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 サ行五(四) 〙
    1. 繰り返す。反復する。
      1. [初出の実例]「をかしやかなる事もなき御文を、うちも置かず、ひき返しひき返し見ゐ給へり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)宿木)
    2. もとのところへ返す。あとへもどす。
      1. [初出の実例]「さきざきも、しろしめし、御覧じたる、三つ四つは、ひきかへし、はしたなめきこえむもいかがとて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)胡蝶)
    3. 裏に返す。うらがえす。ひっくりかえす。くつがえす。
      1. [初出の実例]「畳、所々ひきかへしたり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)須磨)
    4. ( 連用形を副詞的に用いる ) うってかわって。逆に。
      1. [初出の実例]「六条わたりにも、とけ難かりし御気色をおもむけ聞え給ひて後、ひき返しなのめならむは、いとほしかし」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕顔)
    5. 考えなどを変える。また、悔い改める。改善する。
      1. [初出の実例]「すでに討たんとしたりしが、中にて心をひきかへし」(出典:御伽草子・猿源氏草紙(室町末))
    6. すぐに返す。直ちにこたえる。おりかえす。
      1. [初出の実例]「鬢の髪を少し押切って、北方の文に巻そへ、引返し一筆書て」(出典:太平記(14C後)二)
    7. ひっかえす(引返)[ 二 ]
      1. [初出の実例]「ト幕の内、聖天囃子にてつなぎ、直ぐ引返(ヒキカヘ)す」(出典:歌舞伎・当龝八幡祭(1810)二幕)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 サ行五(四) 〙
    1. もとの場所にもどる。もどってくる。ひっかえす。
      1. [初出の実例]「うてやものども、うてやとて、都をさしてひき返(カヘ)す」(出典:松井本平治(1220頃か)一)
    2. もとの状態にもどる。もとのようになる。
      1. [初出の実例]「まだ調べもかはらず、ひきかへし、その折、今の心ちし給ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)松風)

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