形・容(読み)かたち

精選版 日本国語大辞典 「形・容」の意味・読み・例文・類語

かたち【形・容】

〘名〙 物体が平面または空間を占めている有様
① 外見に現われた様子。形体。外形
書紀(720)神代上(兼方本訓)「時に、天地(あめつち)の中に一物(ひとつのもの)(な)れり。状(カタチ)葦牙(あしかひ)の如し」
※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)平泉「秀衡が跡は田野に成て、金雞山のみ形を残す」
② 人の容貌や姿態。
(イ) 人の顔の有様。顔だち。
※書紀(720)垂仁一五年八月(北野本訓)「唯竹野媛は、形姿(カタチ)(みにく)きに因りて本土(もとのくに)に返(かへしつかは)す」
平家(13C前)灌頂「桃李の御粧猶こまやかに、芙蓉の御かたちいまだ衰させ給はね共」
(ロ) 人の姿。からだつき。
※竹取(9C末‐10C初)「かぐや姫、もとのかたちに成ぬ」
※義血侠血(1894)〈泉鏡花〉一「渠(かれ)の形躯(カタチ)貴公子の如く華車(きゃしゃ)に、軆度は深厳にして」
③ 美しい顔だち。美貌。また、その人。→形有り
※宇津保(970‐999頃)内侍督「すべてかしこに仕うまつるべき女、かたちども、仁寿殿にはさぶらふべき用意してあり」
※浮世草子・武家義理物語(1688)六「木村長門守めしつかひに、松尾小膳とて、形(カタチ)奉公の種として」
④ 物事の状態や傾向
※書紀(720)天武一四年九月(北野本訓)「各判官一人、史一人、国司郡司及び百姓消息(あるカタチ)巡察(み)せしむ」
※疑惑(1913)〈近松秋江〉「児島に連れて行かれるやうな形になるのを、私は心苦しく思った」
⑤ 図面。また、模様。
※書紀(720)大化二年八月(北野本訓)「冝く国々の壃堺(さかひ)を観て、或は書(ふみにしる)し、或は図(カタチをか)いて持来て示(みせ)(まつ)れ」
⑥ 実質が伴わない形式だけのこと。外面的なこと。→形ばかり
※浮世草子・新可笑記(1688)一「天理をそむき形(カタチ)悪事をたくみ、非を利につくりなせばとて」
⑦ まとまった状態。整った有様。
孔雀船(1906)〈伊良子清白〉華燭賦「二人いささか 容儀(カタチ)を解きぬ」
⑧ ある物事が存在する証拠、理由となるもの。根拠。
※交隣須知(18C中か)四「虚誕 カタチモナイコトヲ云ニハ ヒトガジツノナイヨウニヲモイマスル」
[語誌]上代では、「かた」が単にものの外形を表わすのに対し、「かたち」は人間の姿・容貌に関していうことが多い。中古になると美醜という価値判断を伴う傾向があり、その中でもとりわけ③の美貌に限定して指すことがあった。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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