徒・悪戯(読み)いたずら

精選版 日本国語大辞典 「徒・悪戯」の意味・読み・例文・類語

いたずら いたづら【徒・悪戯】

[1] 〘形動〙 (徒)
① 存在する物事が、無益、無用であること。役に立たないこと。むだで価値がないさま。
万葉(8C後)一七・三九六九「時の盛りを 伊多豆良爾(イタヅラニ) 過し遣りつれ」
源氏(1001‐14頃)若紫我が身のかくいたづらに沈めるだにあるを」
② あるべき物がないために物足りないこと。物がなく空虚なさま。
書紀(720)孝徳・大化元年八月(北野本訓)「又閑曠(イタツラナル)所に、兵庫(くら)を起造(つく)りて」
③ 用がなく、ひまなこと。する事もなく、手持ちぶさたなさま。所在ないさま。
※土左(935頃)承平五年一月一八日「ふねも出(いだ)さでいたづらなれば」
④ 本来の目的、意図などを果たさないで終わること。むなしく事を終えること。成果があがらないさま。→いたずらに
落窪(10C後)一「かかる雨にきたるを、いたづらにてかへすな」
[2] 〘名〙
[一] (形動) ((一)の転じたもので、のちにもっぱら「悪戯」の字があてられる)
① (━する) 無益な行為。また、そのような行為をしがちであること。
(イ) 他人に迷惑をかけるようなよくないふるまい。わるさ。また、それをしばしば行なうさま。
※虎寛本狂言・真奪(室町末‐近世初)「きゃつが色々いたづらを致しまする」
(ロ) 子供などがふざけてするわるさ。もてあそぶべきでない物をおもちゃにするさま。
洒落本・禁現大福帳(1755)序「発明(かしこい)と誉(ほめ)そやされると悪騒(イタヅラ)が不成(ならぬ)ゆへ」
(ハ) 自分のした事を謙遜していう語。「ほんのいたずらのつもりでございます」
② 性愛に関する行為、感情などを主として否定的にいう語。
(イ) 性に関してだらしがないこと。みだらであるさま。好色な感じ。
※咄本・内閣文庫本醒睡笑(1628)七「若き女房の徒(イタヅラ)さうなるあり」
(ロ) 性的な衝動異性に対する思い。
※浮世草子・好色五人女(1686)一「恥は目よりあらはれ、いたづらは言葉にしれ」
(ハ) (━する) 男女間の、道にはずれた関係。不品行な行為。特に、夫婦でない男女がこっそりあうこと。不義。密通。姦通。
浄瑠璃・山崎与次兵衛寿の門松(1718)中「もし私にいたづらあらば、先の相手を切りも殺しもなさる筈」
[二] (徒)
① 女の前髪の末を、髻(もとどり)の左右から背に出したもの。ふりわけ。〔随筆守貞漫稿(1837‐53)〕
② 操り人形の鬘(かつら)の一つ。若い男の耳の所から顔の横に細長く出ている毛。
③ 前髪の両端に垂れ下げる飾り。若い女は細いものを、年配者は太いものをつける。
[補注]「いたずら」が無用な、むだな状態を表わすのに対して、類義語「むなし」は、物自体が存在しない状態をいう。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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