日本大百科全書(ニッポニカ) 「忠誠審査」の意味・わかりやすい解説
忠誠審査
ちゅうせいしんさ
loyalty test
1947年、トルーマン米大統領の発した「連邦官吏忠誠審査に関する大統領令」に基づく公務員の思想調査・公職適格審査。「合衆国の使用人たる地位に、不忠誠な人間が浸透しないよう、合衆国を最大限に保護すること」を目的としてこの制度が確立され、その結果、各官庁に忠誠委員会が設けられ、公務員はその政治的信条、破壊団体として指定された団体に加入ないし関係している、またはしていたという理由、さらに交友関係によって、なんら不忠誠の行為がなくても、その職を免じられることになった。こうした制度が設けられた背景としては、「冷戦」の激化によって共産主義への脅威感が高まり、体制信従への衝動が強まったことがあげられる。この制度は、各州、各地方公共団体、民間団体、学校などにまで広まった。しかし、その一般的審査手続は粗雑かつ恣意(しい)的で、秘密警察性が強く、伝統的な法の正当な手続を破るものとして、識者によって非難されてきた。
[田口富久治]