内科学 第10版 「急性出血性結膜炎」の解説
急性出血性結膜炎(コクサッキーウイルス,エコーウイルス,エンテロウイルス)
急性出血性結膜炎は突然の強い目の痛み,異物感,羞明などで始まり,結膜の充血や結膜下出血を伴うことが多い.眼瞼浮腫,多量の眼脂,結膜濾胞,角膜表層のびまん性混濁もみられる.発熱や頭痛などの全身症状も約20%の症例でみられる.通常約10日間で治癒する.原因ウイルスはエンテロウイルス70またはコクサッキーウイルスA24v(vは変異株の意)である.潜伏期はエンテロウイルス70が1日であるのに対し,コクサッキーウイルスA24vでは2~3日である.エンテロウイルス70では罹患後半年以上を経て四肢に運動麻痺が起こることがある.エンテロウイルスはその名の示すように消化管で増殖するのが普通であるが,エンテロウイルス70もコクサッキーウイルスA24vも消化管で増殖することはできず,感染部位は結膜に限局している.発生には特別な季節性はみられないが,ときどき爆発的な流行を起こす.罹患年齢は広範囲にわたるが,小児特に1~4歳に多くみられる.急性出血性結膜炎は,感染症法では五類感染症・定点把握疾患(眼科定点)に定められている.また,第三種学校伝染病に定められており,学校においては伝染のおそれがないと認められるまで出席停止の措置をとる.[中込 治]
■文献
Palacios G, Casa I, et al: Human enteroviruses. In: Infectious Diseases 3rd ed (Cohen J, et al eds), pp1528-1538, Mosby-Elsevier, 2010.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報