学齢児童・生徒に対して学校への出席を停止すること。出席停止を行うのは、性行不良であって他の児童・生徒の教育に妨げがある場合(学校教育法35条)と、感染症による場合(学校保健安全法19条)である。1960年代に入って、対教師暴力など、中学生による校内暴力事件の続発に伴い、従来あまり例のなかった性行不良による出席停止が改めて注目を集めるようになった。
性行不良による出席停止は、懲戒の意味ではなく、学校の秩序を維持し、ほかの児童・生徒の義務教育を受ける権利を保障するという観点から、市町村教育委員会がその保護者に命じる。出席停止の措置がとられるのは、対教師暴力のほか、生徒間暴力、器物損壊、授業妨害などの行為を繰り返し、ほかの児童・生徒の教育に妨げがあると認められる場合である。学校としては、出席停止によって児童・生徒を学校から締め出すのではなく、家庭と協力して学習の支援その他の教育上必要な措置を講ずるなど、本人の立ち直りを促す配慮がたいせつである。
出席停止の件数は、文部省(現文部科学省)が出席停止措置の通達を発した1983年(昭和58)当初は200件を超えたが、その後急減し、1990年代に入って40~50件台前後にとどまった。出席停止の理由としては、暴力行為(対教師暴力、生徒間暴力、対人暴力、器物破損)が圧倒的に多い。1995年(平成7)からはいじめの加害者も出席停止の対象に加えられたが、その実数はきわめて少ない。なお、学級崩壊などに対する厳しい対応を求めた文部省方針を背景に、1999年度の出席停止を受けた小・中学生の延べ人数は84人に上り、前年度の1.5倍に達し、2001年6月には出席停止の要件・手続きなどが学校教育法等に加筆、明文化された。その後は2002年度37人、2003年度25人と減少傾向にあったが、2005年以降はふたたび増加し、40~60人で推移している。
感染症による場合の出席停止は、感染症が他の児童生徒に蔓延(まんえん)することを抑えるための緊急避難的な措置であり、「校長は、感染症にかかつており、かかつている疑いがあり、又はかかるおそれのある児童生徒等があるときは、政令で定めるところにより、出席を停止させることができる」(学校保健安全法19条)と規定されている。感染症による出席停止は、校長が行うとされているため、義務教育諸学校に限定されない。
[下村哲夫・窪田眞二]
『坂本秀夫著『生徒懲戒の研究』(1982・学陽書房)』▽『下村哲夫著『新・生徒指導の法律学――教師・生徒・親の権利関係』(1993・学習研究社)』▽『河上亮一著『学校崩壊――現場からの報告』(2001・草思社)』▽『窪田眞二・小川友次著『教育法規便覧』平成22年版(2009・学陽書房)』
(2012-09-9)
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