デジタル大辞泉
「慢性疲労症候群」の意味・読み・例文・類語
まんせいひろう‐しょうこうぐん〔マンセイヒラウシヤウコウグン〕【慢性疲労症候群】
《「筋痛性脳脊髄炎(ME:myalgic encephalomyelitis)」とも》健康に生活していた人が、ある日突然、原因不明の強い全身倦怠感におそわれ、通常の生活が送ることが困難になる病気。重度の疲労感とともに微熱・頭痛・脱力感・思考力の低下・抑うつなどが長く。ストレスや遺伝的要因による神経・内分泌・免疫系の変調に基づく疾患とされるが、原因は十分に解明されていない。CFS(chronic fatigue syndrome)。
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慢性疲労症候群(CFS)
日々の暮らしが困難になるほどの疲労感に突然襲われ、微熱や頭痛、筋肉痛、睡眠障害などが長期にわたって続く症状。詳しい発症要因は分かっておらず、明確な治療法も確立されていない。病名が病態を正確に表していないとの指摘から最近は、欧州やカナダで1950年代から使われてきた「筋痛性脳脊髄炎」(ME)と呼び、併記することもある。
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まんせいひろう‐しょうこうぐん‥ヒラウシャウコウグン【慢性疲労症候群】
- ( [英語] chronic fatigue syndrome の訳語 ) 〘 名詞 〙 風邪様症状で発症し、日常生活ができない著しい疲労感、不眠、頭痛、微熱、リンパ節腫脹などの精神神経症状が長期にわたり存在する状態。原因は一義的に確立されていないが、ウィルス感染、精神的要因、内分泌や免疫系の障害が考えられている。CFS。
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慢性疲労症候群
まんせいひろうしょうこうぐん
chronic fatigue syndrome
それまで健康に過ごしていた人が、原因不明の激しい全身倦怠(けんたい)感に襲われ、その症状が6か月以上続き、日常生活を送るのにも支障をきたすようになる病気。略称CFS。おもな症状は、強度の疲労感、倦怠感、脱力感、頭痛、微熱、筋肉痛や関節痛、筋力低下、睡眠障害、思考力や集中力の低下、抑うつ症状などで、仕事や家事が手につかなくなり休養を余儀なくされる程度から、体を動かすことさえむずかしくなるほどの重症まで幅広い。抑うつ状態を呈する場合は気分障害や心因性の病態と診断されることがあり、筋肉痛や関節痛を伴う場合は、全身痛が主症状の線維筋痛症の病態ともきわめて類似する。そのため、医療機関でうつ症状や痛みの程度に応じた別の診断が下されることも多い。
1988年にアメリカで初めて慢性疲労症候群として報告され、日本では1991年(平成3)に厚生省(現、厚生労働省)に研究班が発足、調査・研究が開始された。原因は解明されていないが、神経系、免疫系、内分泌・代謝系の異常が複雑に絡み合った病態であることが明らかになっている。また、PET(陽電子放出断層撮影)検査で重症患者の中脳や視床に炎症がみられることがわかっており、厚生労働省はCFSの診断にPETなどの特殊検査による客観的な評価を用いることを推奨している。治療は、抗うつ剤や抗不安剤の投与、免疫力を高めるための漢方薬や、抗酸化作用向上のためのビタミンCの服用などがあるが、確実で有効な治療法はみつかっていない。
[編集部 2022年8月18日]
その後、厚生労働省が2014年度(平成26)に行ったCFS患者の日常生活に関する実態調査で、1日をほとんど寝たきりのまま生活する重症患者が30%以上に達することがわかった。また、CFSが、回復に長い時間を要するほどの激しい疲労などが長期間続くだけではなく、神経系機能障害も伴う深刻な実態であることも明らかとなった。全体の患者数は24万~38万人と推計されている。
国際的には、日本でCFSとよぶ疾患を筋痛性脳脊髄(せきずい)炎(ME:myalgic encephalomyelitis)とよぶことがあり、国際的な学会名も「ME/CFS学会」となっている。こうした潮流から日本においても「ME/CFS(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群)」の病名が用いられるようになっている。病態は中枢神経系の機能異常や調節障害が中心で、ウイルス感染後に発症することが多いとされる。国際疾病分類(ICD-10)でも、ME/CFSは神経系疾患に分類されている。2011年10月には、国際的医学雑誌「ジャーナル・オブ・インターナル・メディシン」に、世界各国医師と患者権利団体で構成する専門委員会が作成した、MEの詳細な診断基準(ME-ICC)が掲載された。こうしたなか、日本のNPO患者団体は「慢性疲労症候群をともに考える会」から名称を「筋痛性脳脊髄炎の会(ME/CFSの会)」と改め、さらに踏み込んだ活動を進めている。
[編集部 2022年8月18日]
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「慢性疲労症候群」の意味・わかりやすい解説
慢性疲労症候群【まんせいひろうしょうこうぐん】
chronic fatigue syndromeを略してCFSともいう。それまで元気に働いていた人が,突如極度の疲労感に襲われ,意欲はあるが,仕事はおろか日常生活にまで支障をきたす病気。風邪をきっかけに発症することが多い。 厚生省が発表した〈診断基準〉によれば,自覚症状として,(1)微熱ないし悪寒,(2)喉(のど)の痛み,(3)リンパ節の腫れ・痛み,(4)筋力の低下,(5)筋肉の痛み,(6)作業後24時間以上続く倦怠(けんたい)感,(7)頭痛,(8)関節の痛み,(9)神経精神症状(光過敏,鬱(うつ)状態,思考力低下など),(10)過眠・不眠などの睡眠障害,(11)(1)〜(10)の症状が急に現れる,などがある。また,その大前提として,〈他の病気をもっている場合には慢性疲労症候群ではないこと〉〈だるさが6ヵ月以上続くこと〉の2点が挙げられている。 この診断基準は,1988年にアメリカ防疫センターが作成したものをもとにしているが,これは,CFSがまだまだ未知の部分が多く,専門とする医師が少ないため,この診断基準をもとに診断をしようという考えからつくられたものである。 患者の約7,8割が女性であり,特に20〜30代の高学歴のキャリアウーマンが多い。原因ははっきりしていないが,ウイルス説や免疫異常説,ストレスなどの心身症説などがある。 今のところこれといった治療法はなく,精神的な症状がある人には精神安定剤(トランキライザー),微熱・筋肉痛など身体的な症状がある人には非ステロイド性抗炎症剤と,対症療法が中心となる。肉体的・精神的なストレスから解放されることが一番の治療法でもあり,カウンセリングなども重要となってくる。 CFSの歴史は古く,19世紀から世界各地で存在したといわれている。
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慢性疲労症候群
(膠原病と原因不明の全身疾患)
慢性疲労症候群は1980年代後半、米国のある地域で多発したことから注目されたもので、それまでさまざまな病名で呼ばれていたものを、この病気の中心症状である慢性疲労を病名として用いたものです。
慢性疲労症候群は激しい全身倦怠感・疲労感が比較的急激に起こり、その他に多彩な症状を伴う原因不明の病気です。人口のおよそ0.3%にみられ、20~50代に発病します。かぜのような感染症が引き金となりますが、原因は不明です。
この病気では、発病前の活動が半分以下にも低下する激しい全身倦怠感・疲労感が急激に起こり、微熱、のどの痛み、関節や筋肉の痛み、こわばった感じやリンパ節のはれ、頭痛や落ち込んだ気分などがみられます。
検査では、膠原病の診断に有用な抗核抗体がしばしば陽性となるほかには、一般的な検査では明らかな異常はみられません。したがって、この病気の診断には血液検査やX線検査からでなく、症状の内容、程度と診察結果から診断の手引きに照らし合わせて行われるため、しばしば診断が困難となります。
治療は根治的なものはなく、基礎療法として大量のビタミンCやB12、漢方薬や抗うつ薬も用いられることもあります。また、認知行動療法などが行われることがありますが、難治性の経過をとることがしばしばです。
しかし、この病気によって死亡することはありません。線維筋痛症と類似の病気であり、両方の病気がお互いに合併することが3分の1にあります。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
知恵蔵
「慢性疲労症候群」の解説
慢性疲労症候群
長期間にわたり原因不明の微熱や筋肉痛、全身の倦怠感などが続き、十分な休養を取っても回復しない病気。いくつかの診断基準で、「長期間」とは、6カ月以上とされている。
強い疲労感や全身の痛みのために月に数日以上、仕事や家事ができなかったり、なかには発症以来ずっと寝たきりで過ごす患者もいる。血液や尿などでこの病気を裏づけるバイオマーカーはまだ見つかっておらず、他の疾病の可能性がすべて否定されて初めて診断がつく。筋痛性脳脊髄炎(ME;Myalgic Encephalomyelitis)とも呼ばれる。
1984年に米国でこのような病態が報告されて以来、世界各国で同じような症状の患者が見つかり、患者数は、一説には世界で千数百万人と言われている。現在、米国、イギリス、カナダをはじめとする各国で、客観的な診断ツール、発症原因、治療法について研究が進められているが、決定的な成果はまだほとんど得られていない。
日本では91年、厚生省(現・厚生労働省)に疲労調査研究班が発足。92年に厚生省CFS診断基準が発表された。現在も、障害者対策の一環として疲労研究班と名を変えて存続しているが、客観的な診断法がまだ開発されていないため、患者は身体障害者手帳の取得もままならない状況が続いている。
2009年10月、米国「サイエンス」誌に、XMRV(異種指向性マウス白血病関連ウイルス)がCFS患者から検出されたという報告があった。次いで10年8月には、「米国科学アカデミー紀要」(PNAS)に、MLV-related viruses(マウス白血病ウイルスファミリー)がCFS患者の89.5%から検出されたという報告が載り、これが原因究明と治療法の開発につながるのではないかという期待が高まっている。
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
家庭医学館
「慢性疲労症候群」の解説
まんせいひろうしょうこうぐん【慢性疲労症候群】
1987年、アメリカ防疫センターが発表した原因不明の症候群です。その数年前に、アメリカのネバダ州で、このような症候群にかかる患者さんが集団発生して、注目されていました。
慢性的に続く強い全身のだるさを主症状として、微熱、咽頭痛(いんとうつう)、頸部(けいぶ)リンパ節の腫(は)れ、筋肉痛、頭痛、不眠・過眠といった睡眠異常などがみられます。
どの年齢層にもおこりますが、思春期から中年期に多く発症します。
原因として、ウイルス(EBウイルス、エンテロウイルス、HHV‐6など)の感染が疑われたり、多くの患者さんに免疫異常がみられるとの報告があり、これが関連している可能性も指摘されていますが、まだ確証は得られていません。
日本でも、厚労省に研究班が設置され、診断基準をつくって調査を行なっています。
症状が多彩で、これといった検査法もないため、似たような症状を示す病気と、どうみわけるかが問題です。とくにウイルスの感染症や、膠原病(こうげんびょう)(免疫のしくみとはたらきの「[膠原病について]」)、心身症(「心身症」)などとのみきわめが重要です。
また、諸臓器にはっきりした病変がないことを確かめ、それらの病気ではないことを確認しなければなりません。
この症候群を1つの病気としてみるのか、いくつかの病気が複合して現われたものなのか、議論があることも事実です。
治療は、原因が不明なため、根本的なものはありません。症状に応じて解熱鎮痛薬(げねつちんつうやく)、抗うつ薬などが用いられることもあります。
まんせいひろうしょうこうぐん【慢性疲労症候群】
慢性疲労症候群とは、6か月以上にわたり強い疲労感が持続することによって社会生活が著しく損なわれ、病歴上あるいは検査上、診断のつけようがない病態をさします。
これは、アメリカにおいて1990年前後から注目されるようになった新しい疾患概念です。日本ではいまだコンセンサスが得られておらず、単なる「怠(なま)け病(びょう)」とみなされることも多いようです。典型例は、かぜ症状に引き続いて疲労感と全身倦怠感(けんたいかん)が始まり、意欲低下、不眠などの精神症状をともなうことが多いといわれます。うつ病との関連も示唆されますが憂うつ感のうったえは少なく、「からだのだるさ」や「おっくうさ」といった症状が目立つのがふつうです。
精神的ストレスと感染症の関連疾患として、精神神経免疫学的な研究(コラム「精神神経免疫学」)が進められています。
出典 小学館家庭医学館について 情報
慢性疲労症候群
まんせいひろうしょうこうぐん
chronic fatigue syndrome; CFS
激しい疲労感が何ヵ月も続き,思考力の低下,睡眠障害などを起す原因不明の病気。 1980年代半ばからアメリカ各地で多発し,ウイルス感染症とみられることから,第2のエイズと騒がれた。アメリカ疾病管理センター (CDC) が作成した診断基準によると,激しい疲労,微熱,頭痛,筋力の低下など 11項目のうち8つ以上の症状が半年以上続くか繰返し現れることが条件とされている。厚生省は 91年に研究班を組織,本格的な調査に乗出したが,92年に約 120人の患者が見つかった。最近の研究では免疫を高める薬に治療効果があったとの報告もある。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報