慢性肉芽腫症

内科学 第10版 「慢性肉芽腫症」の解説

慢性肉芽腫症(原発性免疫不全症候群)

(13)慢性肉芽腫症(chronic granulomatous dis­ease:CGD)
概念・病因
 食細胞の活性酸素産生障害のために貪食した細菌・真菌を殺菌できず,また消化管・気道・尿路への肉芽腫形成を特徴とする.活性酸素の産生にかかわるNADPHオキシダーゼの異常による.伴性劣性のgp91-phox欠損症と常染色体劣性遺伝のp22-phox,p47-phox,p67-phox,rac2の遺伝子異常により発症する.伴性劣性の遺伝形式をとるものが全体の約2/3を占める.
臨床症状
 カタラーゼ陽性の化膿菌(黄色ブドウ球菌など)による皮膚,リンパ節,肺,肝の感染症に罹患し,膿瘍形成や肉芽腫形成を伴いやすい.カンジダアスペルギルスによる真菌感染症も高頻度でみられ,非定型抗酸菌などの細胞内寄生細菌に対しても易感染性である.
検査成績
 好中球のNBT色素還元能陰性で,化学発光が欠如し,活性酸素の産生能低下がみられる.
診断
 臨床症状より疑い,gp91-phox,p22-phox,p47-phox,p67-phox,rac2の蛋白の欠損遺伝子異常を同定することにより確定診断する.
予後
症例では成人まで生存するが,アスペルギルスによる真菌感染症が致命的なことがある.
治療
 ST合剤,抗真菌薬の予防内服.IFNγの投与も一部の症例では有効である.根治療法として造血幹細胞移植がある.[峯岸克行]
■文献
Notarangelo LD, Fischer A, et al: Primary immunodeficiencies: 2009 update. J Allergy Clin Immunol, 124: 1161-1178, 2009.
Ochs HD, Smith CIE, et al: Primary Immunodeficiency Diseases, 2nd ed, Oxford University Press, New York, 2007.

慢性肉芽腫症(好中球機能異常症)

(1)慢性肉芽腫症(chronic granulomatous disease)
 スーパーオキシド産生酵素構成分子(gp91 phox,p22 phox,p47 phox,p67 phoxおよびp40 phox)のいずれかに異常があり,好中球および単球・マクロファージのスーパーオキシド産生が障害されている.X連鎖を示すgp91 phox欠損の頻度が最も高い.ほかの異常は常染色体劣性遺伝を示す.殺菌能が著しく障害されており,乳児期から肺,肝,リンパ節,皮膚などの難治性化膿性感染症を繰り返す.原因菌の多くはカタラーゼ陽性で過酸化水素を産生しない菌(黄色ブドウ球菌,緑膿菌,セラチアノカルジア,アスペルギルスなど)である.殺菌能の障害によって慢性炎症となり,腫瘍壊死因子などの炎症性サイトカインが持続的に産生され,その結果,多臓器に肉芽腫が形成される.肉芽腫によってしばしば腸管や尿路の狭窄または閉塞が生じる.肉芽腫には副腎皮質ステロイドの投与が有効である.ST(スルファメトキサゾール・トリメトプリム)合剤,イトラコナゾールおよびインターフェロンγの予防投与が有効である.感染初期に十分量の抗菌薬を投与することが重要である.[北川誠一]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「慢性肉芽腫症」の意味・わかりやすい解説

慢性肉芽腫症
まんせいにくげしゅしょう
chronic granulomatous disease

全身の各臓器に小肉芽腫の形成,黄褐色の脂質顆粒含有の組織球が認められる疾患伴性劣性遺伝をし,男児は女児の7倍で,1歳以前に発病するものが 70%を占めている。患者は幼児期から慢性の化膿性リンパ節炎を反復し,肝脾腫,肺浸潤,眼や口の周囲の発疹を生じる。病因としては,白血球の食作用に際しての過酸化水素の生産障害,五炭糖回路の代謝障害があげられるが,単一のものではなく,一つの症候群と考えられる。7~8歳までに3分の1が感染症で死亡する。早期に抗生物質を使用するほか,膿瘍を形成した化膿巣は切開排膿する。また,白血球輸血や骨髄移植なども試みられている。

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