内科学 第10版 「慢性肉芽腫症」の解説
慢性肉芽腫症(原発性免疫不全症候群)
概念・病因
食細胞の活性酸素産生障害のために貪食した細菌・真菌を殺菌できず,また消化管・気道・尿路への肉芽腫形成を特徴とする.活性酸素の産生にかかわるNADPHオキシダーゼの異常による.伴性劣性のgp91-phox欠損症と常染色体劣性遺伝のp22-phox,p47-phox,p67-phox,rac2の遺伝子異常により発症する.伴性劣性の遺伝形式をとるものが全体の約2/3を占める.
臨床症状
カタラーゼ陽性の化膿菌(黄色ブドウ球菌など)による皮膚,リンパ節,肺,肝の感染症に罹患し,膿瘍形成や肉芽腫形成を伴いやすい.カンジダやアスペルギルスによる真菌感染症も高頻度でみられ,非定型抗酸菌などの細胞内寄生細菌に対しても易感染性である.
検査成績
好中球のNBT色素還元能陰性で,化学発光が欠如し,活性酸素の産生能低下がみられる.
診断
臨床症状より疑い,gp91-phox,p22-phox,p47-phox,p67-phox,rac2の蛋白の欠損遺伝子異常を同定することにより確定診断する.
予後
軽症例では成人まで生存するが,アスペルギルスによる真菌感染症が致命的なことがある.
治療
ST合剤,抗真菌薬の予防内服.IFNγの投与も一部の症例では有効である.根治療法として造血幹細胞移植がある.[峯岸克行]
■文献
Notarangelo LD, Fischer A, et al: Primary immunodeficiencies: 2009 update. J Allergy Clin Immunol, 124: 1161-1178, 2009.
Ochs HD, Smith CIE, et al: Primary Immunodeficiency Diseases, 2nd ed, Oxford University Press, New York, 2007.
慢性肉芽腫症(好中球機能異常症)
スーパーオキシド産生酵素構成分子(gp91 phox,p22 phox,p47 phox,p67 phoxおよびp40 phox)のいずれかに異常があり,好中球および単球・マクロファージのスーパーオキシド産生が障害されている.X連鎖を示すgp91 phox欠損の頻度が最も高い.ほかの異常は常染色体劣性遺伝を示す.殺菌能が著しく障害されており,乳児期から肺,肝,リンパ節,皮膚などの難治性化膿性感染症を繰り返す.原因菌の多くはカタラーゼ陽性で過酸化水素を産生しない菌(黄色ブドウ球菌,緑膿菌,セラチア,ノカルジア,アスペルギルスなど)である.殺菌能の障害によって慢性炎症となり,腫瘍壊死因子などの炎症性サイトカインが持続的に産生され,その結果,多臓器に肉芽腫が形成される.肉芽腫によってしばしば腸管や尿路の狭窄または閉塞が生じる.肉芽腫には副腎皮質ステロイドの投与が有効である.ST(スルファメトキサゾール・トリメトプリム)合剤,イトラコナゾールおよびインターフェロンγの予防投与が有効である.感染初期に十分量の抗菌薬を投与することが重要である.[北川誠一]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報