(読み)イ

デジタル大辞泉 「慰」の意味・読み・例文・類語

い【慰】[漢字項目]

常用漢字] [音](ヰ)(呉)(漢) [訓]なぐさめる なぐさむ
相手の気持ちをいたわり落ち着かせる。「慰安慰撫いぶ慰問慰留慰霊慰労自慰弔慰
[名のり]のり・やす

なぐさ【慰】

心を慰めるもの。なぐさめ。
あれのみそ君には恋ふる我が背子が恋ふと言ふことはことの―そ」〈・六五六〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「慰」の意味・読み・例文・類語

なぐさみ【慰】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「なぐさむ(慰)」の連用形の名詞化 )
  2. 人の心がなごやかに静まるようなもの。気ばらしになるもの。なぐさめ。なぐさび。
    1. [初出の実例]「つれづれもなくさみに思ひたちつるを、さらばいかにせましと思ひみだれてきこゆ」(出典:寛元本和泉式部日記(11C前))
  3. たのしみ。娯楽
    1. [初出の実例]「誠に世になくさみは多けれども、鳥をいて遊ぶほど面白ゐ物はござらぬ」(出典:波形本狂言・雁礫(室町末‐近世初))
  4. なぶりもの。玩弄物。もてあそび。
    1. [初出の実例]「扨も扨も、目の見へぬ者は浅ましい者じゃ。〈略〉扨々能慰じゃ」(出典:虎寛本狂言・不聞座頭(室町末‐近世初))
  5. 女をもてあそび犯すこと。
    1. [初出の実例]「太鞁持(たいこもち)坊主を西国衆(さいこくしゅ)に仕立、京中の見せ女を集め、慰(ナグサミ)にせられける」(出典:浮世草子・好色一代女(1686)一)
  6. ばくち。てなぐさみ。
    1. [初出の実例]「博奕(ナクサミ)に見るめ忍ぶの裏座敷」(出典:雑俳・あかねうら(1772頃))

なぐさもる【慰】

  1. ( 下二段動詞「なぐさむ(慰)」の連体形「なぐさむる」の変化したもの ) =なぐさめる(慰)
    1. [初出の実例]「ますらをは友のさわきに名草溢(なぐさもる)心もあるらむ我れそ苦しき」(出典:万葉集(8C後)一一・二五七一)

なぐさ【慰】

  1. 〘 名詞 〙 人の心をなごやかに静まらせるもの。気をまぎらわせるもの。なぐさみ。なぐさめ。
    1. [初出の実例]「吾れのみそ君には恋ふる吾が背子が恋ふとふことは言(こと)の名具左(ナグサ)そ」(出典:万葉集(8C後)四・六五六)

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普及版 字通 「慰」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 15画

[字音] イ(ヰ)・ウツ
[字訓] なぐさめる・いやす・うらむ

[説文解字]

[字形] 形声
声符は尉(い)。〔説文〕十下に「安なり」とし、また「一に曰く、恚怒(いど)なり」というが、慰を恚怒の意に用いる例はなく、それは鬱(うつ)、慍(うん)の声に通用したものであろう。尉は火のし。火のしをしたように、平らかに安らかとなる意である。

[訓義]
1. なぐさめる、やすめる。
2. いやす、なおす。
3. 鬱・慍と通じ、むすぼれる、いかる、うらむの意に用いる。

[古辞書の訓]
名義抄〕慰 ヤスム・イコフ・トフ・コシラフ 〔字鏡集〕慰 ナクサム・ヤスンズ・ヤスム・コシラフ・トフ・シリソク・イコノフ・イル

[語系]
慰・熨・iutは同声。鬱iutもまた同声。中にとじこもり、むすぼれる意がある。慍iunもその声が近い。

[熟語]
慰安慰誨・慰慰賜・慰・慰謝・慰慰恤慰釈・慰存・慰待・慰納慰譬慰愍慰拊慰撫・慰勉・慰問慰喩慰諭慰励・慰労
[下接語]
安慰・恩慰・寛慰・自慰・招慰・賞慰・綏慰・宣慰・存慰・弔慰・鎮慰撫慰・勉慰・褒慰・奔慰・誘慰・労慰

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

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