(読み)タン

デジタル大辞泉 「憚」の意味・読み・例文・類語

たん【憚】[漢字項目]

[音]タン(漢) [訓]はばかる
恐れはばかる。遠慮して避ける。「畏憚いたん忌憚

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「憚」の意味・読み・例文・類語

はばかり【憚】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「はばかる(憚)」の連用形の名詞化 )
  2. 恐れつつしむこと。差し控えること。恐縮。遠慮。
    1. [初出の実例]「ただごえの関は、はばかりの関とたとしへなくこそおぼゆれ」(出典:枕草子(10C終)一一一)
    2. 「お酌は憚りだが先生に願ふで」(出典:其面影(1906)〈二葉亭四迷〉二四)
  3. さしつかえがあること。さしさわり。支障
    1. [初出の実例]「よはひの程よりは、世をまつりごたむにも、をさをさ、はばかりあるまじうなむ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)賢木)
  4. ( 形動 ) 「はばかりさま(憚様)」の略。
    1. [初出の実例]「おちかつきのため、はばかりを申ませふ」(出典:黄表紙・嗚呼奇々羅金鶏(1789))
  5. ( 人目をはばかる所の意 ) 便所。はばかりじょ。はばかりば。
    1. [初出の実例]「あの人が雪隠(ハバカリ)へ這入って居ようとは」(出典花間鶯(1887‐88)〈末広鉄腸〉中)

はばからわはばからはし【憚】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙 はばかるべきである。はばかりがある。はばからし。
    1. [初出の実例]「御おもてぶせにもあるべきかなと、はばからはしうおぼせど」(出典:浜松中納言物語(11C中)三)

憚の派生語

はばからわし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

はばからし【憚】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙はばからわし(憚)
    1. [初出の実例]「おはし合へる所はばからしけれど」(出典:今鏡(1170)一)

はばし【憚】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙 はばかられる。はばかりがある。気がおける。はばからわし
    1. [初出の実例]「下臈はいかでかとはばしくいひけるを」(出典:今物語(1239頃))

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普及版 字通 「憚」の読み・字形・画数・意味


15画

[字音] タン・タ
[字訓] はばかる・いむ・おそれる・いかる

[説文解字]
[金文]

[字形] 形声
声符は單(単)(たん)。〔説文〕十下に「忌み(はばか)るなり」とし、「一に曰く、(はばか)るなり」とする。〔左伝、昭十三年〕「之れを憚(おど)すに威を以てす」とあり、受身だけでなく、能動の意もある。弾(だんがい)のような悪邪を祓う法とも関係のある語であろう。〔楚辞、招魂〕「君王親しく發して、(せいじ)を憚(おそ)れしむ」とあり、弾射によって憚れさせることをいう。

[訓義]
1. はばかる、いむ、おそれる、なやむ、うやまう。
2. いかる、おそれさせる。
3. おどす、おびやかす、おいはらう。
4. やむ、つかれる、おびえる、あやぶむ。
5. 怛と通じ、いたむ。
6. 単と通じ、おおきい。

[古辞書の訓]
名義抄〕憚 イカル・ハバカル・ハバム・カタシ・オボカス・オボク・アシカル・オソル・カヨフ・イタムル 〔字鏡集〕憚 ムツカシ・カタシ・ハバム・カヨフ・アシカル・イタハル・オドロク・ハバカル・サキ・オソル

[語系]
憚・彈(弾)danは同声。また怛tat、戰(戦)・顫tjianは声義の関係のある語で、怛は驚き恐れる意、戰・顫(せん)は慄えおののく意である。

[熟語]
憚畏憚悪憚改憚赫憚忌憚懾・憚人・憚憚難憚煩憚避憚服憚漫憚労
[下接語]
畏憚・回憚・危憚・忌憚・疑憚・驚憚・敬憚・厳憚・猜憚憚・懾憚・心憚・深憚・尊憚・内憚・忿憚・憂憚

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

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