成人Still病

内科学 第10版 「成人Still病」の解説

成人Still病(関節リウマチおよび類縁疾患)

定義・概念
 19世紀の終わりに小児科医のStillが小児の慢性関節炎のなかに,発熱リンパ節腫脹脾腫などの全身症状が強い症例を報告した.この小児の全身型慢性関節炎(Still病)に類似した臨床症状を示す成人症例がその後散見されるようになり,成人発症Still病と称されるようになった.小児のStill病が成人期に持ち越したり再発したりする例と,成人期に新たに発症するStill病(狭義の成人発症Still病)を合わせて成人Still病と定義される.
原因・病因
 病因は不明である.何らかの感染症を契機に発症する可能性が示唆されているが,その感染性因子は同定されていない.単球やリンパ球の活性化に基づく高サイトカイン血症(IL-1,IL-6,TNF-α,IFN-γ,IL-18など)が成人Still病の多彩な病態形成に関与することが想定されている.
疫学
 明らかな人種差や男女差はなく,全世界的に患者は認められるようである.発症年齢は16〜35歳が大半を占める.
臨床症状
1)自覚症状:
発熱,多関節痛,咽頭痛,筋肉痛などを訴える.発熱は全例に認められ,日差変動の激しい弛張熱(spik­ing fever)であることが特徴である.夕方から夜にかけて高熱を呈し,朝には平熱に戻ることが多い.関節炎も必発で,手関節,膝関節,足関節などが好発部位である.長期化すると関節リウマチのように破壊性強直性の変化をきたすこともある.咽頭痛は70%の患者で認められるが咽頭培養で感染性因子は証明されない.
2)他覚症状:
特有の皮疹が85%の症例で認められ診断的価値が高い.サーモンピンク色をした扁平または丘疹状の紅斑で時に融合し,体幹や四肢近位部に認められる.発熱とともに一過性に出現し瘙痒感などの自覚症状もないため見逃されやすい.摩擦などの機械的刺激により顕在化する場合がある(Köbner現象).60~70%の症例で肝脾腫やリンパ節腫脹を認める.約半数の患者で薬剤アレルギーを認める.
検査成績
 赤沈やCRPなどの炎症反応が亢進する.白血球は1万/μL以上に上昇し,分画は好中球が主体(80%以上)である.活動期には80%の症例で血清フェリチンが基準値上限の5倍以上に著増することが特徴で,診断的有用性が高い.非特異的な肝機能障害も高頻度に認める.抗核抗体やリウマトイド因子は陰性である.リンパ節生検では非特異的な炎症所見がみられるのみであるが,リンパ腫などの疾患を除外する意味で診断的価値はある.
診断
 特異的な臨床検査所見に乏しいために,不明熱の原因として常に念頭において診断をすすめ,ほかの膠原病,感染症,リンパ腫などの悪性腫瘍を除外することが重要である.成人Still病分類基準を表10-2-8に掲げる.
合併症
 総じて予後は良好であるが,慢性関節炎の結果,関節破壊の進む症例がある.播種性血管内凝固症候群や血球貪食症候群は予後不良な合併症であり,急に汎血球減少が進行する場合には注意を要する.炎症が長期に持続する場合には二次性アミロイドーシスを合併することもある.
治療・予後
 全身症状が軽度の症例においては非ステロイド系抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)をまず試すが,大半の症例でステロイドホルモンが必要となる.プレドニゾロンで0.5~1.0 mg/日の初期量で開始し,4週から6週継続してから徐々に漸減する.約1/4の症例では単周期型の経過で寛解に至る.過半数の症例で少なくとも1度の再発を経験する.再発を何回も繰り返す多周期型の経過を示す症例も40%程度存在する.ステロイド抵抗性の症例にはアザチオプリンやシクロホスファミドなどの免疫抑制薬が試みられてきた.最近では関節リウマチに対するのと同様の低用量メトトレキサート経口間欠投与(Fautrelら,1999)や生物学的製剤(Suematsuら,2011)が奏効したとの報告もある.[野島美久・廣村桂樹]
■文献
Fautrel B, Borget C, et al: Corticosteroid sparing effect of low dose methtrexate treatment in adult Still’s disease. J Rheumatol, 26: 373-378,1999.
Suematsu R, Ohta A, et al: Therapeutic response of patients with adult still’s disease to biologic agents: multicenter results in Japan. Mod Rheumatol, 22: 712-719, 2012.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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