成唯識論(読み)ジョウユイシキロン

デジタル大辞泉 「成唯識論」の意味・読み・例文・類語

じょうゆいしきろん〔ジヤウユイシキロン〕【成唯識論】

世親せしんの「唯識三十頌ゆいしきさんじゅうじゅ」について、護法らインド十大論師が施した注釈を集大成したもの。玄奘げんじょうが漢訳して10巻に収めた。法相ほっそう中心的論書。

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精選版 日本国語大辞典 「成唯識論」の意味・読み・例文・類語

じょうゆいしきろんジャウユイシキロン【成唯識論】

  1. 世親の「唯識三十頌(じゅ)」の注釈書。唐の玄奘訳。一〇巻。弟子の基(窺基)の進言により護法(ダルマパーラ)の説を中心にして翻訳・編集されたもので、もと唯識学者一〇人(十大論師という)がそれぞれ一〇巻ずつ著わし、合計一〇〇巻あったという。法相宗の根本聖典。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「成唯識論」の意味・わかりやすい解説

成唯識論
じょうゆいしきろん

インド大乗仏教の学者、護法(ごほう)らの著書。唐代659年(顕慶4)に玄奘(げんじょう)によって漢訳された。10巻。世親(せしん)の『唯識三十頌(じゅ)』に対する注釈。『唯識三十頌』には十大論師の注釈が存在したが、玄奘はその高弟の基(窺基(きき))の意見に基づき、そのいちいちを翻訳するかわりに、護法の学説正義として、それを中心に他の論師の注釈をあわせて一本として訳出したものが本書であると伝えられる。しかしその内容をみると、護法の学説をもって一貫し、他は、何人かの論師の所説が批判さるべきものとして断片的に引用されているにすぎない。本書は、法相(ほっそう)宗の根本典籍として中国日本の仏教界において重要視され、広く読まれた。本書の注釈としては、基の著した『成唯識論述記』が基本的なものであり、そのほか、慧沼(えしょう)の『成唯識論了義燈(りょうぎとう)』、智周(ちしゅう)の『成唯識論演秘(えんぴ)』など、甚だ多くの注釈書、解説書が存する。

[勝呂信静]

『深浦正文著『唯識学研究』上下(1954・永田文昌堂)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「成唯識論」の意味・わかりやすい解説

成唯識論
じょうゆいしきろん
Vijñaptimātratāsiddhi-śāstra

護法著作世親の『唯識三十頌』に対する注釈書。もとは護法をはじめ多くの学匠たちの説を記した大きな書であったが,玄奘がこれを中国訳するときに,護法の説を中心に編集したもの。いわゆる有相唯識派の説を述べており,玄奘によって中国や日本に伝えられ,法相宗基礎となった。

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世界大百科事典(旧版)内の成唯識論の言及

【春日版】より

…毎版面の右すみに開版の年代,寺名,願主,施主,彫工などの名が隠刻されているが,普通は印刷のさい刷りこまれない。現存のものでは,寛治2年(1088)模工僧観増の刊記のある《成唯識論(じようゆいしきろん)》10巻(残巻,正倉院蔵),元永2年(1119)模工僧延観の刊記のある《成唯識論》巻十(京都守屋家蔵)などが古いほうである。このほか春日版と称されるもののうちには,建暦2年(1212)刊《瑜伽師地論》100巻,承元3年(1209)刊《法華経普門品》3333巻,嘉禄年間(1225‐27)に刊行された《大般若波羅蜜多経》600巻など,質量ともにすぐれたものがある。…

※「成唯識論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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