中世後期に活躍した人形遣い。手傀儡の〈手〉は〈私的な〉という意味をもち職能組織には属さないことを示すもので,平安時代から中世後期に活躍した傀儡が,職能組織として交通の要衝に地歩を築いて活躍したのに対し,手傀儡は宮中や貴族の邸内に参入,当時の流行芸能である猿楽能などを人形で演じて見せた。ほかに一座の少年が輪鼓(りゆうご),師(獅)子舞,曲舞(くせまい)などを演じることもあった(《看聞日記》)。本来は春の3ヵ月間に各家をまわる祝福芸能であったが(《親長卿記》),それ以外にも演じ,数日間の勧進興行を行うこともあった(《大乗院寺社雑事記》)。しかし16世紀に入ると姿を消し,摂津の西宮の戎(えびす)神社と結合した新しい人形芸団の〈夷舁き(えびすかき)〉に取って代わられた。
→傀儡
執筆者:山路 興造
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…なお現在一般に演じられる演出は初日之式または四日目之式と呼ばれるものであるが,ほかに二日目之式,三日目之式,法会之式,神楽之式,父尉延命冠者之式,十二月往来(じゆうにつきおうらい)之式などがあり,流儀と演出によって多少違いがある。
[人形劇の翁]
人形浄瑠璃の前身である中世末期の夷舁(えびすかき)とか手傀儡(てくぐつ)と呼ばれる人形劇は,その演目に能楽曲を用いる場合が多く,人形で翁舞を演じた。近世初期以降に人形劇が浄瑠璃と結びついて以後も,演目の最初に翁舞(式三番叟)を演じる伝統は残され,現在でも地方の人形芝居には多く残る。…
※「手傀儡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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