手首から手の甲部分を保護する布で,〈ておい〉〈てこう〉〈てさし〉〈こて〉などともいう。もっぱら屋外の労働に際して用い,現在でも農村で用いられている。江戸時代には行商や旅行の際にも用いられた。平形と筒形があり,甲の部分は三角形または半円形につくられ,これを〈やま〉とか〈さめ〉という。〈やま〉の先端にじょうぶな糸で輪をつくり,中指を通して手の甲に固定し,手首を巻き紐かこはぜでとめて用いる。材料は紺木綿が多いが,縞や絣柄また旅行用の甲斐絹(かいき),狩猟用の毛皮製もある。東北地方では甲の部分に白糸や色糸で花を縫いとりし,また,ぐし縫いで菱形に刺し,千鳥かがりをほどこすなど美しいものが多い。
→籠手(こて)
執筆者:日浅 治枝子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
手の甲、手首を覆うもので、てこう、てさし、てっか、こてなどともよばれる。屋外の労働のとき、外傷、日差し、寒気を避けるために使われ、旅行、行商にも用いられた。現在も農作業に使用される。形態は平型と筒型とがあり、平型は甲の部分が「やま」といわれる三角形か半円形となっており、その先についている紐(ひも)に中指を通して手首に巻き、紐かこはぜで留める。筒型には親指を通す部分がついている。材料は紺木綿が多いが、縞(しま)、絣(かすり)も用いられ、東北地方では白糸や色糸で刺した美しいものがつくられた。またぎなど狩人(かりゅうど)は、カモシカ、キツネ、ウサギなどの毛皮製を用いていた。
[岡野和子]
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