投銀(読み)なげがね

改訂新版 世界大百科事典 「投銀」の意味・わかりやすい解説

投銀 (なげがね)

抛銀とも書き,海上銀ともいった。海外貿易に投資した金融業の一種。江戸時代初期に朱印船貿易家や客商,唐船および寛永期(1624-44)のポルトガル船に対し,長崎博多豪商が投銀投資を行ったが,これは海上投資の一種で,危険性が大きく,それだけに利率は高く年間30~50%,場合によっては70%にもなった。この高い利息の理由は,往復航海で借主が無事であれば,それだけの高額な利息をつけたが,万一洋上で借主が難破した場合には,貸主損害とする定めであったからである。それゆえ豪商たちは共同して幾口にも分割して投資し,万一1船に事故があっても,他の9船は無事であることで十分に金融上の利益を確保する方法をとっていた。
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百科事典マイペディア 「投銀」の意味・わかりやすい解説

投銀【なげがね】

抛銀とも書き,海上銀(かいじょうぎん)ともいった。江戸初期,朱印船貿易に携わるポルトガル人・中国人・日本人等に島井家・末次家などの豪商が貸し付けた資金で,海上投資の一種。船舶積荷担保とし利率は年3〜5割,7割を超えるものもあった。豪商たちは幾口にも分割して投資し,船に事故が生じても利益をあげられる策を講じた。

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旺文社日本史事典 三訂版 「投銀」の解説

投銀
なげがね

江戸初期,朱印船貿易全盛期に日本の豪商が海外貿易船に貸し付けた資金
「抛銀」とも書く。きわめて投機的で,船舶・船荷を担保に融資し,借入者は海上遭難の場合返済義務がなく,そのかわり利率は3.5割から11割の高利であった。1635年日本船の渡航禁止後はポルトガル人・中国人に対する投銀が増加したが,鎖国により回収不可能となり,日本商人大打撃をうけた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「投銀」の意味・わかりやすい解説

投銀
なげがね

抛銀とも書く。江戸時代初期の朱印船貿易の繁栄した時期に,長崎,博多などの豪商が中国人,ポルトガル人,日本の船主,客商 (朱印船に客乗の商人) などに対し貸付けた資金。一種の投機的な貿易投資で船舶,船荷を担保として3~10割の高利に及び,普通一航海半年の期限元利とも返済される約定になっていた。

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世界大百科事典(旧版)内の投銀の言及

【冒険貸借】より

…銀行制度,海上保険制度がそれぞれ発達するにつれて,これらの機能はしだいに分化し,冒険貸借は行われなくなった。日本でも御朱印船時代に投銀(なげがね)と呼ばれる類似の取引が行われていたことがある。【高木 秀卓】。…

※「投銀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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