招魂社(読み)しょうこんしゃ

精選版 日本国語大辞典 「招魂社」の意味・読み・例文・類語

しょうこん‐しゃ セウコン‥【招魂社】

〘名〙 靖国神社および護国神社旧称。江戸末期から明治維新前後にかけて、国事に殉難した人士霊魂をまつった各地の招魂場を改称したもの。明治元年一八六八)に京都東山に殉難の諸士を合祀したのを、翌年六月、東京九段坂上に仮神殿を造建して東京招魂社と改称し、同一二年になって靖国神社と改称。また、地方のものは、昭和一四年(一九三九)三月、護国神社と改称。
※新聞雑誌‐三号・明治四年(1871)六月「東京招魂社内にて展覧せし物産会奇物異品等」

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デジタル大辞泉 「招魂社」の意味・読み・例文・類語

しょうこん‐しゃ〔セウコン‐〕【招魂社】

明治維新前後から国家のために殉難した人の霊を祭る神社。各地に建てられ、昭和14年(1939)護国神社と改称した。→護国神社靖国神社

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改訂新版 世界大百科事典 「招魂社」の意味・わかりやすい解説

招魂社 (しょうこんしゃ)

靖国神社および護国神社の旧称。1862年(文久2)福羽美静(ふくばびせい)(1831-1907)らが討幕運動で非命の最期をとげた尊皇の志士を京都東山の霊山りようぜん)にまつり,63年八坂神社境内に小祠を建立したのが最初である。討幕諸藩でも招魂慰霊がなされ,長州藩では64年(元治1)に藩主により山口市赤妻に設置され,慶応年間十数ヵ所に増加した。68年(明治1)5月太政官布告で霊山にペリー来航の〈嘉永癸丑〉(1853)以来の〈国事殉難者〉の招魂場を設置してより,諸藩でも〈旌忠社(せいちゆうしや)〉等の名称でそれぞれに設置。68年6月江戸城内で戊辰戦争戦没者の招魂祭を,7月には京都河東操練場で招魂慰霊の祭典をそれぞれ執行した。大村益次郎の尽力で69年に勅命により東京招魂社を九段坂上に設置し,鳥羽・伏見より箱館戦争にいたるまでの戊辰戦争戦没者を合祀した。79年東京招魂社は別格官幣社靖国神社となる。官祭招魂社は,各藩ごとのもので,74年の内務省達で官費支給を受け,山口,鹿児島等の討幕諸藩を中心に71年までに多くが設立されていた。私祭招魂社は74年以後が大部分である。これら地方招魂社は,旧藩域を中心にまつったもので,強い旧藩の郷党意識にささえられていた。ちなみに愛知県名古屋の官祭招魂社(現,愛知県護国神社)は,尾張藩士をまつった旌忠社にはじまったため,当初西南戦争の戦死者の分祀を〈土民〉のゆえに拒否した。かつ長らく尾張部出身者のみの合祀で,1926年まで三河部出身者は合祀されなかった。明治政府は,東京招魂社-靖国神社を頂点に,地方招魂社を系列化することで,天皇の下に民心を収斂させる場として招魂社を位置づけた。1939年地方招魂社は官私の別なく整理され護国神社と改称した。
護国神社 →靖国神社
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「招魂社」の意味・わかりやすい解説

招魂社
しょうこんしゃ

明治維新前後から国家のために殉難した人の霊を祀(まつ)る神社。当初は招魂場とよばれて各地に祀られていたが、1875年(明治8)招魂社の制が定められ、東京招魂社(後の靖国(やすくに)神社)を中心に整備されていった。1939年(昭和14)護国(ごこく)神社と改称。

[飯尾直樹]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「招魂社」の解説

招魂社
しょうこんしゃ

幕末・維新期の国事殉難者とその後の戦没者を祭った神社。護国神社の旧称。維新のために殉難した死者を慰霊する目的で1864~67年(元治元~慶応3)に設けられた招魂墳墓・招魂場に由来する。68年(明治元)に太政官布告で国事のために死んだ藩士や一般人と戊辰(ぼしん)戦争の死者の霊を祭る祠(ほこら)が京都東山につくられ,この頃から諸藩にも招魂場が設けられるようになった。69年に東京九段に招魂社をつくり,鳥羽・伏見の戦から箱館戦争の戦死者を加えて社領を1万石とし,72年に本殿が竣工した。79年に東京招魂社は靖国(やすくに)神社と改称して別格官幣社に列した。地方の招魂社は1939年(昭和14)にそれぞれ地名を冠して護国神社と改称した。

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百科事典マイペディア 「招魂社」の意味・わかりやすい解説

招魂社【しょうこんしゃ】

元来,幕末〜明治維新の戦乱で死者を多く出した各藩が設けた招魂場に由来。1875年政府は招魂社の祭儀を官祭とし,1876年各地の招魂社にまつられている霊と未祀霊を東京招魂社(靖国神社)に合祀することとした。1939年各地の招魂社は護国神社と改称,各府県に1社が設けられた。
→関連項目大村益次郎護国神社

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「招魂社」の意味・わかりやすい解説

招魂社
しょうこんしゃ

幕末,明治維新の激動期に死んだ多数の犠牲者を慰霊する意味で明治新政府が設立した神社。初め明治1 (1868) 年京都東山に設けられ,次いで東京招魂社が同5年東京九段上に建てられて各地から合祀され,1879年靖国神社と改称され,別格官幣社としてその後の内乱,外征の戦死者に対する国家的合祀社となった。同名の神社がその後各地にでき,1939年護国神社に改称されたが,第2次世界大戦後は単立宗教法人となった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「招魂社」の解説

招魂社
しょうこんしゃ

靖国神社の前身。

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世界大百科事典(旧版)内の招魂社の言及

【靖国神社】より

…東京都千代田区九段坂上に鎮座。1879年6月4日に東京招魂社を抜本的に改革,靖国神社と改称,別格官幣社に列せられた。嘉永癸丑(1853)以来の国事殉難者,戊辰戦争の戦没者に加え,西南戦争の戦死者をはじめ,以後日本の対外戦争における戦死者を〈靖国の神〉となして国家がまつったもの。…

※「招魂社」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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