アメリカの作家S・ベローの長編小説。1947年刊。大不況のさなか、かろうじて業界新聞編集の仕事にありついていた、小心なユダヤ人レバンサルに二つの事件がもちあがる。一つは甥(おい)の死で、弟(甥の父)の留守中相談にのったことから、自分が責任を問われているように感じる。もう一つは、就職運動中に面接した経営者のおうへいな態度から喧嘩(けんか)になったことがあるが、そんな彼を紹介したため失職したと称する男オールビーが出現し、「責任」をとれと付きまとい始めたことである。ユダヤ人として、また一人の人間として、自らを犠牲者、被害者と考えていた男が、突然加害者としての自覚を強いられる過程を描いた小説で、初期ベローの悲劇的人生観が濃密に出ている。
[渋谷雄三郎]
『太田稔訳『犠牲者』(新潮文庫)』
…20代の大半をさまざまな職業につきながらの創作精進に過ごしたあげく,1944年に発表した処女長編《宙ぶらりんの男》が好評を博し,続いて46年には英語の講師としてミネソタ大学に就職,以来方々の大学で英文学や創作指導の授業を担当しながら,活発な創作活動を続けている。前述の処女長編も第2作《犠牲者》(1947)も,現代の庶民の都市生活を写実的に描きながら,前者では人間の〈自由〉の本質を,後者では被害者がそのまま加害者でもありうる人間関係の機微を鋭く追求して,アメリカ小説には珍しく思想性を表面に出した知的な肌合いの小説である。《オーギー・マーチの冒険》(1953)はまた一転して,主人公が饒舌体の語り口で波乱にみちた自分の半生を語るという結構をとり,シカゴの貧家に生まれた少年の自己探求の旅を軸に現代社会を活写したピカレスク風の長編。…
※「犠牲者」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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