国家神道のもとでの社格の一つ。律令制下の主要な神社は,神祇官が祭祀する官社に列せられたが,平安時代初頭に僻遠の地にある神社は神祇官に代わって国司が奉幣することになったので,前者を官幣社,後者を国幣社と称した。1868年(明治1),神祇官が再興され,71年には新しい官国幣社が定められたが,官幣社は歴代天皇・皇族をまつる神社と皇室の尊崇の厚かった神社,国幣社は延喜の制における国幣社と国土経営上重要な役割を果たした神社が列せられ,官幣社,国幣社ともに大・中・小の社格に分けられた。74年,楠木正成をまつる神戸の湊川(みなとがわ)神社が創建されると,祭神が皇族でも天神地祇でもなかったので,国家のために特に功労のあった人臣をまつる神社を別格官幣社に列する制度を75年に設け,祭祀は官幣小社に準ずることとした。同年,豊臣秀吉をまつる京都の豊国(とよくに)神社と,徳川家康をまつる日光の東照宮が別格官幣社となり,その後,年を追って増加し,1945年までに28社に達した。28社を祭神別に見ると,南北朝時代の忠臣新田義貞,北畠親房,名和長年らをまつる神社が10社,幕末維新期の主要人物と近世の藩政に功績のあった大名をまつる神社8社,戦国時代の大名をまつる7社,藤原鎌足,和気清麻呂・広虫,藤原秀郷をまつる3社となっており,それら28社の創建の中に,国家神道下の神社政策と,それを支えた歴史観を見ることができる。
執筆者:大隅 和雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
1871年(明治4)神社の社格制度が「神社は国家の宗祀(そうし)」という理念の下に整備され、その一つとして官幣社が定められたが、翌72年に創建された湊川(みなとがわ)神社は別格官幣社とされ、以降逐次増加し、計28社あった。官幣小社に準じて待遇された。祭神は、国家的見地からみて功労があり、広く国民からの崇敬を受けている人臣であることが特徴であった。靖国(やすくに)神社もその一つであった。
[牟禮 仁]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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