宗教活動を円滑に行うために法人格を得た宗教団体。都道府県知事か文部科学相が認証し、2020年末時点で約18万法人が存在する。法人になるための要件や手続き、法人としての責務などは宗教法人法に定められている。礼拝施設などの財産を法人名義で所有でき、管理や取引が容易になる。寺や神社の建物や土地は固定資産税を免除され、お守り販売や葬儀の収入も非課税となるなど、税制面の優遇が受けられる。法令に違反し、公共の福祉を害する行為をした場合などに、裁判所は解散を命じることができる。解散命令があっても宗教団体として活動を続けられる。
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法律により権利義務の主体として認められた宗教団体。公益法人の一種。
明治憲法は,その28条で信教の自由を認めたが,その一方で,政府は,神社を国法上宗教ではないとする立場から公法上の営造物法人として扱った。そして,その他の宗教団体に対しては,民法上公益法人となりうる旨の規定があるにもかかわらず(民法34条),これを適用せず,法人となる道を事実上閉ざしていた。1939年,宗教団体法が制定され,一般の宗教団体も法人となりうるようになったが,神社についてはその対象から除外していた。しかし45年の敗戦を契機に,神道に対する国教的扱いが廃され,同年12月,神社を含むすべての宗教団体を対象として法人格を取得させるための宗教法人令が制定・施行された(同令に基づくものを旧宗教法人という)。そして,48年に日本国憲法が施行され,信教の自由,政教の分離が明確にされたことを受けて(憲法20条,89条),51年4月に新たに宗教法人法が制定・施行された(同法に基づくものを新宗教法人という)。
宗教法人法は,宗教団体が,礼拝の施設その他の財産を所有し,これを維持運用し,その他その目的達成のための業務および事業を運営することに資するため,宗教団体に法律上の能力(法人格)を与えることを目的とするものである(1条1項)。そして,信教の自由の尊重の趣旨に基づき,同法を宗教活動の制限に利用してはならない旨,明定している(同条2項)。宗教法人法に基づき法人となることのできる宗教団体とは,宗教の教義をひろめ,儀式行事を行い,および信者を教化育成することを主たる目的とするもので,礼拝の施設を備える神社,寺院,教会,修道院その他これらに類する団体である(2条1号)。また,これらの団体を包括する教派,宗派,教団,教会,修道会,司教区その他これらに類する団体もこれに含まれる(同条2号)。宗教法人を設立するためには,これらの団体が,宗教法人法に定める事項を記載した規則を作成し,都道府県知事の認証(他の都道府県にある宗教法人を包括する宗教法人等の場合は文部大臣の認証)を受けなければならない(12条)。一般の公益法人の場合は,主務官庁の許可が必要であり,主務官庁の裁量によって許可を与えない場合がありうるのに対し,宗教法人の場合は信教の自由の原則上裁量の余地はなく,要件を満たしていれば当然に設立を認める認証主義がとられている。この認証後,設立登記をすることで宗教法人は成立し(15条),法律上の権利義務の主体となる。
宗教法人をその性質上,財産を構成要素とする財団法人とみるか,信者という人を構成要素とする社団法人とみるかについては議論が分かれている。原則は,財団法人の構成がとられているといってよいが,規則によっては,議決機関を設けることが可能であり(12条1項6号),その限りでは社団法人に近い構成のものもありうるといえる。そうでない場合も,諮問機関が置かれたりすることが多く,また,宗教法人の設立や財産処分に関して,信者等に対する公告が義務づけられ(12条3項,23条),団体としての性質にも配慮がなされている。
宗教法人には,3人以上の責任役員を置き,そのうち1人を代表役員とし,この者が宗教法人を代表し,事務を総理する(18条)。その権限は法人事務に限られ,宗教上の機能を含まないものとされている(18条6項)。宗教法人は,公益事業のほか法人の目的に反しない限り公益以外の事業を営むこともできるが,収益は当該宗教法人や他の公益事業のために使用することが義務づけられている(6条)。宗教法人が収益事業を営めば,もちろんそれは課税の対象となるが,それ以外については免税の特典が与えられている(法人税法4条,地方税法348条)。なお,事業の公正を期するため,所属庁に対する報告および質問に答える義務を課し(78条の2),財産目録のほかに収支計算書の作成,備え付け,閲覧および提出の義務を課している(23条)。
執筆者:鍛冶 良堅
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
宗教法人法(昭和26年法律第126号)によって法人格を取得した宗教団体をいう。公益法人の一種。現行法においては、宗教団体が法人になるか否かはまったく任意であって、非法人であっても自由に宗教活動を行うことができる。宗教団体が法人格を取得することの意義は、団体の名により財産を所有し、維持運用し、訴訟その他の法律行為を行う能力を獲得することであって、宗教上の活動の自由とは無関係である。宗教法人は、税法の定めるところにより、一定の非課税規定の適用を受ける。
宗教法人になることができる宗教団体は、宗教の教義を広め、儀式行事を行い、および信者を教化育成することを主たる目的とする団体で、(1)礼拝の施設を備える神社、寺院、教会、修道院その他これらに類する団体、(2)前号に掲げる団体を包括する教派、宗派、教団、教会、修道会、司教区その他これらに類する団体、の2種類とされている(宗教法人法2条)。宗教法人は、法の定める要件を備えた規則を作成し、所轄庁の認証を受け、設立登記を行うことによって設立される。所轄庁とは都道府県知事または文部科学大臣である(同法5条)が、日本国憲法が信教の自由(20条)を保障し、そのために政教分離の原則を定めていることを受けて、認証申請が適法であれば所轄庁の裁量でこれを不認証とすることはできない(宗教法人法14条)し、宗教上の事項について監督、統制、干渉、調停をする権限もない(同法85条)。
ところが、オウム真理教(2000年アレフ、2003年アーレフ、2008年Aleph(アレフ)に改称)が地下鉄サリン事件など、一連の犯罪行為を行ったことを契機に、1995年(平成7)宗教法人法が一部改正され、宗教法人は備え付け書類を所轄庁に提出することを義務づけられ(同法25条)、一方、所轄庁には宗教法人に対する一定の質問権(調査権)が与えられる(同法79条の2)など、宗教法人は所轄庁の管理下に置かれるものという色彩が強められた。しかし、これらの改正規定は、所轄庁の裁量権限を否定している同法の認証主義と整合性を欠くことになり、また憲法の政教分離原則に違反する疑いも払拭(ふっしょく)できないので、かなりの数の宗教法人が書類提出を拒否して抵抗の姿勢をみせるなど、多くの問題を残すことになった。
[洗 建]
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(岩井洋 関西国際大学教授 / 2007年)
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