指しゃぶり(読み)ゆびしゃぶり(その他表記)thumb sucking

知恵蔵 「指しゃぶり」の解説

指しゃぶり

指しゃぶりは、生後4〜5カ月以降に始まる場合が多い。この時期以降の乳児に見られる指しゃぶりは随意的運動であり、探索行動を表す発達の一現象と考えられている。 1歳半を過ぎるころからの指しゃぶりは、手持ちぶさたや不安などによる落ち着かない感情を和らげるための行動でもあり、無理にやめさせようとすると、逆に多くなることがある。弊害は、指にできる吸いだこと歯列への影響だが、一般的には興味が外に向くようになると自然にしなくなる。厳しく禁止してやめさせられるものでもなく、子供の心理的不安を和らげる配慮が必要。歯科の立場からは指しゃぶりやおしゃぶりによる上顎(じょうがく)前突(出っ歯)や開咬(かいこう=上の歯と下の歯がかみ合わない)への影響が指摘される。2歳を過ぎてもやめない場合にはこれらの異常が比較的高頻度に見られ、3歳となるとさらに頻度が高まる。 小児科医小児歯科医との見解相違が親を混乱させてきたが、小児科と小児歯科の保健検討委員会により、両者間の統一見解が形成された。それによると、乳児期(生後12カ月ごろまで)の指しゃぶりは乳児の発達過程における生理的な行為なので、そのまま経過をみればよい。幼児期前半(1〜2歳まで)では、遊びが広がるので、昼間の指しゃぶりは減少する。退屈なときや眠いときに見られるに過ぎない。したがって、この時期はあまり神経質にならずに子供の生活全体を温かく見守ればよい。幼児期後半(3歳〜就学前まで)になると、すでに習慣化した指しゃぶりでも、保育園幼稚園で子供同士の遊びなど社会性が発達するにつれて自然に減少することが多い。しかし、なお頻繁な指しゃぶりが続く場合は小児科医、小児歯科医及び臨床心理士による積極的な対応が必要になる。小学校入学後には指しゃぶりはほとんど消失する。この時期になっても固執している子供、あるいはやめたくてもやめられない子供の場合は、小児科医、小児歯科医及び臨床心理士の連携による積極的対応を行う。

(中村敬 大正大学人間学部人間福祉学科教授 / 2008年)

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改訂新版 世界大百科事典 「指しゃぶり」の意味・わかりやすい解説

指しゃぶり (ゆびしゃぶり)
thumb sucking

指とくに親指をしゃぶる癖で,つめかみなどと同じように,子どもの発達の経過のなかで一過性に出現する身体いじり(身体玩弄)の一つ。生後まもなくから出現し,1,2歳の子どもでは15~60%にみられるとされるごくありふれた現象で,入眠時,空腹時,退屈時に多い。その後はしだいに減少するが,遅かれ早かれ社会的に認められない,みっともない行動だとして禁止されるようになると,背後になにか心理的な問題を隠した行動(神経性習癖)として,さびしさ,母の不在,年齢相応の活動ができない不満の際,あるいは幼児的段階への心理的退行の現象として出現するようになる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「指しゃぶり」の意味・わかりやすい解説

指しゃぶり
ゆびしゃぶり

乳幼児では一般的にみられる習癖で、生後数か月から始まり、2歳ころになると自然に少なくなり、3~4歳ではほとんど消失する。吸う指はおもに親指である。指しゃぶりは不正咬合(こうごう)の原因となりうるが、乳幼児では早急にやめさせる必要はない。

[市丸展子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「指しゃぶり」の意味・わかりやすい解説

指しゃぶり
ゆびしゃぶり

乳幼児にみられる習癖の一種。生後まもない乳児にも認められるが生後2~3ヵ月頃に多くなり,5~6歳でもみられる。従来施設病の一症状と考えられ,愛情の多寡との関係で論じられてきたが,アメリカの児童心理学者 A.ゲゼルによれば,特に乳児期の指しゃぶりは3分の2の子供に多かれ少なかれ認められ,若干は人工栄養児に多いが母乳栄養児にもみられるなどのことから,正常な発達現象とされる。1~2歳の子供にも多く,就寝時や退屈したときにみられ,2~3歳になるとかなり減少,3~4歳頃にはほぼ消失するが,年齢とともに増加するような場合には問題行動と考えて,その原因を考える必要がある。

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家庭医学館 「指しゃぶり」の解説

ゆびしゃぶり【指しゃぶり】

 乳児期後半からみられ、2~3歳ころまでには消失しますが、4~5歳までみられることもあります。発達にともなう生理的な行為で、乳児では空腹、幼児では母子分離の過程や欲求が満たされないときに指しゃぶりをします。
 うるさく注意しないほうがよく、子どもが自然に母親から離れて友だちと遊べるようになると消失していきます。

出典 小学館家庭医学館について 情報

世界大百科事典(旧版)内の指しゃぶりの言及

【幼児性欲】より

…すなわち乳児は空腹でないときでもおしゃぶりで栄養をとるさいの動作を反復して,深い満足を味わう。おしゃぶりはやがて指しゃぶりに発展し,また自慰と結合することすらある(口唇期)。また大便の通過による肛門部への粘膜刺激も快感となる。…

※「指しゃぶり」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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