日本大百科全書(ニッポニカ) 「指揮権発動」の意味・わかりやすい解説
指揮権発動
しきけんはつどう
法務大臣が検察事務に関し、検察官に対して有する指揮監督権を行使すること。ただし個々の事件の取調べまたは処分については、検事総長のみを指揮できる(検察庁法14条)。1954年(昭和29)の造船疑獄の際、これが発動されて有名になった。造船疑獄の捜査が最終段階に入った同年4月20日、最高検察庁は、自由党幹事長佐藤栄作に対する収賄容疑による逮捕許諾の請求を行ったが、翌日、犬養健(いぬかいたける)法相は、吉田茂(しげる)首相の意向を受け、指揮権発動によってこれを拒否した。このため捜査は挫折(ざせつ)し、構造汚職事件の追及は阻止された。犬養は翌22日辞職し、第五次吉田内閣も、結局、12月7日、総辞職を余儀なくされた。
[荒 敬]