捐納(読み)エンノウ

デジタル大辞泉 「捐納」の意味・読み・例文・類語

えん‐のう〔‐ナフ〕【×捐納】

捐官えんかん

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精選版 日本国語大辞典 「捐納」の意味・読み・例文・類語

えん‐のう‥ナフ【捐納】

  1. 〘 名詞 〙 中国制度で、献金して官職を買うこと。また、そうして得た官職。捐官捐輸

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「捐納」の意味・わかりやすい解説

捐納
えんのう

中国で、歴代の王朝政府が財政の困窮を補うために、人民金銭もしくは米穀などを納入させることによって、官位爵位などを与える制度。捐は「寄付する」の意で、捐輸、捐官ともいう。秦(しん)の始皇帝のときに始まるといわれ、当初は爵位だけであったが、漢の武帝のとき、売爵のほかに初めて官を与えた。その後、歴朝において財政窮乏の対策としてしばしば行われたが、明(みん)の景泰(けいたい)年間(1450~57)以来、国子監(こくしかん)生の資格を与えて捐監とよばれ、しだいに恒常的な制度となった。清(しん)では三藩(さんぱん)の乱(1673~81)以後、捐納を利用することが甚だしく、とくに太平天国の乱(1850~64)のときには釐金(りきん)税とともに軍費の財源の主要部分を占めた。さらにその適用範囲も、一般庶民の売官のほか、官吏の昇官および降級罷免の回復などにも拡大された。その後も財政上、捐納はますます行われ、清末の官界の腐敗、堕落を助長する要因となった。

[佐久間重男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「捐納」の意味・わかりやすい解説

捐納
えんのう
Juan-na; Chüan-na

中国の諸王朝が臨時財源を補うため,人民に官爵などの資格を与えて金銭,穀物を納めさせた制度。古く秦,漢の頃からみられ,漢の武帝は売爵のほかに売官の制を始めた。その後,歴朝に引継がれ,15世紀なかば頃から次第に定制化し,明,清では財政収入の主要な項目に数えられ,特に太平天国以来,釐金 (りきん) とともに軍事費の主要財源となった。その弊害は大きく,中国官僚制の腐敗堕落を助長する要因となった。

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旺文社世界史事典 三訂版 「捐納」の解説

捐納
えんのう

中国で政府が人民にある官職を授けることを条件に,米穀・金銭を上納させた制度
秦・漢代から,政府の財政難のときに臨時に行われたが,明代から制度化され,重要な財源として清の滅亡まで存続した。

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普及版 字通 「捐納」の読み・字形・画数・意味

【捐納】えんのう

官を買う。

字通「捐」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の捐納の言及

【売官】より

…一般には官職売買ともいわれる。
[中国]
 中国の場合,時代により貲選(しせん),進納,捐納(えんのう)など呼称は変わるが,米穀または金銭上納の代償として爵位,官職を与える制度は秦・漢にさかのぼる。納粟授爵は商鞅(しようおう)時代にあったとされるが,始皇帝4年(前243)には粟千石を納めれば爵一級が与えられた。…

※「捐納」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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