撓る(読み)シオル

デジタル大辞泉 「撓る」の意味・読み・例文・類語

しお・る〔しをる〕【×撓る/萎る】

[動ラ四]
しなわせる。たわめる。
秋風は軒場の松を―・る夜に月は雲居をのどかにぞ行く」〈玉葉・秋下〉
しみじみとした感じを出す。また、能で、泣く動作をする。
調子真中三重に―・り歌ひたりければ」〈太平記・一七〉
[動ラ下二]しおれる」の文語形
[補説]2は、「しお(霑)る」で、表現をしっとりさせるの意とする説がある。

おお・る〔ををる〕【×撓る】

[動ラ四]花や葉の重みで枝がしなう。たわむほどに茂る。
いはほには花咲き―・り」〈・一〇五〇〉

しな・る【×撓る】

[動ラ五(四)]しなう1」に同じ。「を―・らせて力一杯漕ぐ」

しわ・る【×撓る】

[動ラ五(四)]力が加わってしなう。たわむ。「雪の重みで竹が―・る」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「撓る」の意味・読み・例文・類語

しお・るしほる【撓・萎】

  1. ( 「しをる」と書かれることも多い )
  2. [ 1 ] 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙
    1. 物をしなわせたり、たわめたりする。また特に、弓をたわめる。弓を引きしぼる。
      1. [初出の実例]「秋風は軒端の松をしをる夜に月は雲居をのどかにぞ行く〈永福門院〉」(出典:玉葉和歌集(1312)秋下・六七七)
    2. ( 責 ) 責め懲らす。折檻(せっかん)する。いじめる。また、おとしめる。
      1. [初出の実例]「女をばまかでさせて、蔵にこめてしおりたまうければ、蔵にこもりて泣く」(出典:伊勢物語(10C前)六五)
    3. 歌などで、情趣を強調してうたう。
      1. [初出の実例]「時の調子の真中を三重にしほり歌ひたりければ」(出典:太平記(14C後)一七)
    4. 元気をなくさせる。
      1. [初出の実例]「宮こにてならはざりしに松風の心をしほる山かげのやど」(出典:沙玉集(1418))
    5. 能で、「しおり(霑)」の動作をする。
    6. 能で、上音から更に一段高い音階へ上げて謡う。下掛(しもがかり)の用語。上掛では「くる」という。
      1. [初出の実例]「二字目をしほるを、一字しほりとて」(出典:八帖花伝書(1573‐92)三)
  3. [ 2 ] 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙しおれる(萎)

しわ・る【撓】

  1. 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙 ( 「しおる(撓)」に関係あるか )
  2. 力が加わったり重さがかかったりなどして、弾力のあるものが、折れないで曲がる。しなう。たわむ。
    1. [初出の実例]「柳はしわる踏石は消へ」(出典:雑俳・芥子かのこ(1716‐36))
    2. 「さあ、これは屋根裏が腐った故、此の大雪でしわらうかと」(出典:歌舞伎・吾嬬下五十三駅(天日坊)(1854)二幕)
  3. ( 腹痛のとき、しぜんにからだが前にかがむところから ) 腹がしくしく痛む。
  4. 腹がすく。ひもじいと感じる。多く「胸しわる」の形で用いる。
    1. [初出の実例]「年老ぬる身は、胸しはり心地たがひて例にも似ず覚るなり」(出典:発心集(1216頃か)五)

しな・る【撓】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙しなう(撓)[ 一 ]
    1. [初出の実例]「うはだるみしてねへしなるがよく候や」(出典:仮名草子・清水物語(1638)下)

おお・るををる【撓・生】

  1. 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙 花や葉がおい茂って枝がしなう。また、枝がしなうほど茂る。
    1. [初出の実例]「春へには 花咲き乎遠里(ヲヲリ)」(出典万葉集(8C後)六・九二三)

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