改訂新版 世界大百科事典 「清水物語」の意味・わかりやすい解説
清水物語 (きよみずものがたり)
仮名草子。朝山意林庵(1589-1664)作。1638年(寛永15)刊。2巻。意林庵は細川忠利・徳川忠長に仕えた儒学者で,わかりやすい儒教教理の解説や,当時の政治また風俗の批判をするつもりで,この書を著した。一応小説的形態をとり,著者が清水寺に参詣したとき,多くの人が問答をしているのを傍聴するという形にしている。学問のことから,隠者,賢人,法度,侍の気質,主君の心得,浪人,化物,喧嘩,殉死,天道などの問題が語られている。当時の好学的風潮を反映して,非常なベストセラーになった。ただ儒教を重くし仏教を軽くした点に,《祇園物語》のような,仏教的立場からの批判書を生んだ。問答体小説の祖。
執筆者:野田 寿雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報