撫でる(読み)ナデル

デジタル大辞泉 「撫でる」の意味・読み・例文・類語

な・でる【×撫でる】

[動ダ下一][文]な・づ[ダ下二]
てのひらで軽くさわり、さする。「犬の頭を―・でる」
物や風などが軽く触れる。「高原の風が頰を―・でる」
髪にくしを入れる。
化粧鏡を取出し鬢を―・でて」〈荷風腕くらべ
大切にする。いたわる。いつくしむ。
「善を―・で悪を罪するは天なり」〈読・雨月・貧福論〉
[類語](1さするこする擦る撫で下ろす撫で上げる逆撫で愛撫撫ぜるする撫で回す撫で付ける

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「撫でる」の意味・読み・例文・類語

な・でる【撫・摩】

  1. 〘 他動詞 ダ下一段活用 〙
    [ 文語形 ]な・づ 〘 他動詞 ダ下二段活用 〙
  2. 手のひらなどで、軽くさする。物の表面にそっとさわり、静かにこする。さする。
    1. [初出の実例]「我が母の袖持ち奈弖(ナテ)て我がからに泣きし心を忘らえぬかも」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三五六)
    2. 「水の上を渡ってくる爽かな風が痩せた彼の頬を撫でながら」(出典:故旧忘れ得べき(1935‐36)〈高見順〉一)
  3. 上位の者が下位の者を精神的に愛撫する、かわいがる。君主などが人民をいつくしむこと、子どもや小さな動植物をかわいがることなどをいう。
    1. [初出の実例]「山吹は奈埿(ナデ)つつ生(お)ほさむ有りつつも君来ましつつ挿頭(かざ)したりけり」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三〇二)
    2. 「国を治め、民をなで給し道なれば」(出典:神皇正統記(1339‐43)上)
  4. 髪をとかす。櫛(くし)を使って髪の毛をとく。くしけずる。なでつける。
    1. [初出の実例]「櫛 ナヅ」(出典:字鏡集(1245))
    2. 「化粧鏡を取出し鬢を撫でて」(出典:腕くらべ(1916‐17)〈永井荷風〉三)
  5. 斎宮(さいぐう)の忌み詞で、「打つ」ことをいう。
    1. [初出の実例]「人打つを奈津(ナヅ)と言ふ」(出典:皇太神宮儀式帳(804))
  6. ひき砕く。
    1. [初出の実例]「コメヲ nazzuru(ナヅル)〈訳〉米を搗く」(出典:日葡辞書(1603‐04))

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