摩る（読み）サスル

デジタル大辞泉

さす・る【^▽摩る／^▽擦る】

［動ラ五（四）］手のひらなどでからだや物の表面を、くりかえし軽くこする。「疲れた足を―・る」
[可能]さすれる
[類語]撫でる・こする・擦る・撫で下ろす・撫で上げる・逆撫で・愛撫・撫ぜる・撫ぶする・撫で回す・撫で付ける

出典　小学館

精選版 日本国語大辞典

す・る【摩・擦・磨・擂・摺・刷】

1. [ 1 ] 〘 他動詞 ラ行五（四） 〙
   1. ① 物と物を触れ合わせる。こする。
      1. (イ) 他の物に触れてなでるようにこする。
         1. [初出の実例]「今こそ使(つかひ)たる者(ひと)は、昔は吾が伴(ともたち)と為(し)て、肩摩(スリ)肘触(す)りつつ」(出典：日本書紀（720）継体二一年六月（前田本訓）)
         2. 「立ち踊り 足須里(スリ)叫び 伏し仰ぎ 胸うち嘆き」(出典：万葉集（８Ｃ後）五・九〇四)
      2. (ロ) 二つの物を触れ合わせて交互に動かす。特に、「手をする」の形で用いて、助命、哀願、許可などを乞(こ)う意を表わす。
         1. [初出の実例]「二の手相ひ揩(スル)を即ち不浄とす」(出典：蘇悉地羯羅経略疏寛平八年点（896）二)
         2. 「いみじう怒れる気色にもてなして太刀を引抜けば、女、あが君あが君と向ひて手をするに、ほとほと笑ひぬべし」(出典：源氏物語（1001‐14頃）紅葉賀)
   2. ② 一方を他にこすりつけて摩滅させる。
      1. (イ) 刃物などをとぐ。といで鋭利にする。
         1. [初出の実例]「箭(や)を磨(す)り、鋒(ほこ)を鋭くし」(出典：出雲風土記（733）意宇)
         2. 「石を以て之を磨(スリ)」(出典：大智度論平安初期点（850頃か）一〇)
      2. (ロ) 墨を硯にこすって墨汁をつくる。
         1. [初出の実例]「硯に髪のいりてすられたる」(出典：枕草子（１０Ｃ終）二八)
         2. 「先づ体を正しくし墨を高く取りて端正に磨り」(出典：小学読本（1884）〈若林虎三郎〉五)
      3. (ハ) とぎだす。貝がらなどを漆で塗りこんで磨き出す。
         1. [初出の実例]「北方、いとよくしたる扇二十、螺(かひ)すりたる櫛、蒔絵の箱に白い物入れて」(出典：落窪物語（１０Ｃ後）四)
      4. (ニ) （紙上の文字などを）削ってなくす。
         1. [初出の実例]「明日件良胤他行替補_二闕請_一事之子細召_二仰綱所_一、本寺解文到来日、摩_二良胤_一改入_二解文僧_一可_レ宜」(出典：小右記‐万寿四年（1027）四月二一日)
   3. ③ 鉢や臼などの中で、おしつぶして細かくくだく。すりつぶす。
      1. [初出の実例]「種々の香を買て、〈略〉自から香を搗き磨て室に塗る」(出典：今昔物語集（1120頃か）二)
   4. ④ すりへらしてなくしてしまう。また、費やす。使いはたす。〔日葡辞書（1603‐04）〕
      1. [初出の実例]「首尾能く借りた三両を、十両に仕ようと思ふ壺がからりと外れ、元手までも摺(ス)って仕まった素寒貧」(出典：人情本・恩愛二葉草（1834）三)
   5. ⑤ へつらう。ごきげんとりをする。「胡麻(ごま)をする」
   6. ⑥ ⇒する（掏）
   7. ⑦ ( 摺・刷 ) ある形をこすって他にうつす。
      1. (イ) 型木におしあてて、染料で色をつけ模様を染めだす。色や絵柄を布地にうつしとる。
         1. [初出の実例]「住吉の遠里小野の真榛(まはり)もち須礼(スレ)る衣の盛り過ぎ行く」(出典：万葉集（８Ｃ後）七・一一五六)
         2. 「月草に衣はすらむあさ露にぬれてののちはうつろひぬとも〈よみ人しらず〉」(出典：古今和歌集（905‐914）秋上・二四七)
      2. (ロ) 版木・活字などに墨やインキ、染料などをつけて、紙などに字や絵をうつしとる。また、文字や絵を版木にきざむ。
         1. [初出の実例]「月ごとに三十三礼の聖容をすりたてまつる」(出典：金刀比羅本平治（1220頃か）下)
         2. 「日本紙へ活版で刷(ス)った予約の八犬伝を」(出典：道草（1915）〈夏目漱石〉二五)
2. [ 2 ] 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙 ⇒すれる（摩）

さ‐す・る【摩・擦】

1. 〘 他動詞 ラ行五（四） 〙 ( 「さ」は接頭語。「する」は「擦る」 )
2. ① 手のひらなどで物の表面を反復的に軽くこするようにする。
   1. [初出の実例]「爰打て、かしこさすれとて、寝給ひけるに」(出典：平治物語（1220頃か）上)
   2. 「鉄瓶の銅を挲(サス)りながら」(出典：多情多恨（1896）〈尾崎紅葉〉前)
3. ② ( 「胸をさする」の形で ) 気持などを抑えしずめる。
   1. [初出の実例]「他人より害を受けても胸を擦(サス)って之を宥し」(出典：狐の裁判（1884）〈井上勤訳〉八)

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