擬宝珠(読み)ギボウシ

デジタル大辞泉 「擬宝珠」の意味・読み・例文・類語

ぎ‐ぼうし【擬宝珠】

《「ぎぼうしゅ」の音変化》
ぎぼし(擬宝珠)1」に同じ。
キジカクシ科ギボウシ属の多年草の総称。山地に生え、葉は根際から群がり出る。夏、花茎の上部に紫色または白色の漏斗状の花を総状につける。日本から中国にかけて分布。オオバギボウシコバギボウシなどがあり、園芸品種は多い。ぎぼし 夏》

ぎ‐ぼし【擬珠】

《「ぎぼうしゅ」の音変化》
欄干などの柱の上端につける宝珠形の装飾。青銅製が多い。宝珠頭ほうじゅがしら。ぎぼうし。ぎぼうしゅ。
ネギの花。ねぎぼうず。
ぎぼうし(擬宝珠)2」に同じ。

ぎ‐ぼうしゅ【擬宝珠】

ぎぼし(擬宝珠)1

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精選版 日本国語大辞典 「擬宝珠」の意味・読み・例文・類語

ぎ‐ぼうし【擬宝珠】

〘名〙 (「ぎぼうしゅ(擬宝珠)」の変化した語)
① 高欄や、橋などの親柱の上にかぶせた、ネギの花の形をした飾りの金物如意宝珠の形に似せて作ったもの。ぎぼし。ぎぼしゅ。ぎぼうしゅ。
※太平記(14C後)三九「高欄を金襴にて裹(つつ)みて、ぎぼうしに金薄を押し」
② ネギの花。ねぎぼうず。ぎぼし。ぎぼうしゅ。
③ 植物。
(イ) ユリ科ギボウシ属の総称。いずれも多年草。本州各地および九州の深山に生え、観賞用として庭園に栽培されることもある。高さは六〇センチメートル以上になるものもある。葉は根ぎわに束生し、卵円形、心臓形または広線形などで、先端がとがり、多くは有柄。夏、葉間から花茎を抜き出し、上部が総状花序となって、漏斗状の花を横向きに開く。花冠は先端が六裂し、色は白、淡紫、紫色など。茎、葉は食用になり、またその液汁ははれものにきくという。コバギボウシ、オオバギボウシ、スジギボウシイワギボウシ、ナガバギボウシなど。ぎぼうしゅ。ぎぼし。漢名として紫萼を用いる。《季・夏》
※堤中納言(11C中‐13C頃)はなだの女御「大君『下草龍胆(りんだう)はさすがなんめり。一品の宮と聞えむ』、中の君『ぎぼうしはだいわうの宮にもなどか』」
(ロ) スジギボウシの一変種。観賞用として庭に栽培される。高さ約一メートル。葉は根ぎわに集まり、長さ約三〇センチメートルの太い柄があって斜立し、葉身は長さ約一五センチメートルの卵状楕円形で、先はとがる。初夏に、長さが時に二メートルにも及ぶ花茎を出して淡紫色の花を一〇~二〇個ほどつける。花時には花茎は倒れる。花茎の途中に二~三枚の葉状の苞をもつためオハツキギボウシとも呼ぶ。

ぎ‐ぼし【擬宝珠】

〘名〙
漂流記(1863)「方二三町にて、周囲は石を重ね、凡高さ三四尺、其上に鉄のぎぼしを付たる垣を廻して」
※俳諧・鷹筑波(1638)四「たまらぬはむべもぎぼしの花の露〈政之〉」

ぎ‐ぼうしゅ【擬宝珠】

〘名〙
浄瑠璃・孕常盤(1710頃)一「葱宝珠(ギボウシュ)にとびあがり、かた足かけて長刀をからりとふんでふみおとす」

ぎ‐ぼしゅ【擬宝珠】

※椀久物語(1899)〈幸田露伴〉二「おのれが太夫を買はうならば橋の擬宝珠(ギボシュ)に毛が生へて、それ髱(つと)無しの大島田」

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改訂新版 世界大百科事典 「擬宝珠」の意味・わかりやすい解説

擬宝珠 (ぎぼし)

主として橋や縁(えん)の高欄(こうらん),親柱上端などにかぶせてある覆いで,〈ぎぼうしゅ〉ともいう。上部は宝珠(ほうじゆ)形につくり,装飾と柱木口の傷みを防ぐ機能を兼ねたものである。屋根の頂上や刹柱先端のものは〈宝珠〉で,高欄のものを〈擬宝珠〉という。ネギ花に形が似ているので〈葱台(そうだい)〉とも呼ばれ,〈木法師〉とした例もある。高欄に用いた例は古く漢代の画像石,敦煌の浄土変壁画にもみられる。蓮のつぼみ形のものもある。伊勢神宮正殿の五色の居玉(すえだま)は古い形を伝えている。材質には金属,木,瓦があり,平城京二条大路の橋跡から8世紀の瓦製擬宝珠が発見されている。古いものは宝珠部分が小さく,年代が下がると大きくなる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「擬宝珠」の意味・わかりやすい解説

擬宝珠
ぎぼし

高欄(こうらん)の親柱(おやばしら)の頂部につく宝珠(ほうしゅ)形の装飾。頂部を削り整えたものや、青銅製または鉄製の金物をかぶせたものがある。宝珠、欠首(かきくび)、胴からなる。仏典では、宝珠は海底に住む竜王の頭から出現したもので、毒に侵されず火にも燃えない霊妙なものとし、それを擬したものが擬宝珠である。擬宝珠に金属製のものが多いのは、親柱頂部が雨水で腐朽するのを防ぐためにかぶせたからである。

[工藤圭章]


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百科事典マイペディア 「擬宝珠」の意味・わかりやすい解説

擬宝珠【ぎぼし】

〈ぎぼうしゅ〉ともいう。建築物の高欄(こうらん)や橋の柱の頭部を飾る宝珠形の装飾金具。瓦,石また木をそのまま用いたものもある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「擬宝珠」の意味・わかりやすい解説

擬宝珠
ぎぼし

本来は「ぎぼうしゅ」と読んだ。建物の高欄や橋の欄干の柱頭部を飾る宝珠。形は宝珠形の頭部と,それに接続する円筒形の胴部から成り,多くは青銅製で木製の柱の上にかぶせる。

擬宝珠
ぎぼうしゅ

擬宝珠」のページをご覧ください。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「擬宝珠」の解説

擬宝珠 (ギボウシ・ギボウシュ;ギボシ;ギボシュ)

学名:Hosta undulata var.erromena
植物。ユリ科の多年草,園芸植物

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

デジタル大辞泉プラス 「擬宝珠」の解説

擬宝珠(ぎぼし)

古典落語の演目のひとつ。「金の味」とも。初代三遊亭圓遊、初代柳家小せんが得意とした。

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世界大百科事典(旧版)内の擬宝珠の言及

【擬宝珠】より

…上部は宝珠(ほうじゆ)形につくり,装飾と柱木口の傷みを防ぐ機能を兼ねたものである。屋根の頂上や刹柱先端のものは〈宝珠〉で,高欄のものを〈擬宝珠〉という。ネギ花に形が似ているので〈葱台(そうだい)〉とも呼ばれ,〈木法師〉とした例もある。…

※「擬宝珠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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