( 1 )「勾欄」とも書くが、本来は、転落を防ぐ欄干の意で「勾欄」、高い欄干の意で「高欄」といったと思われる。
( 2 )中国では「勾欄」が多いが、中世以前の日本では「高欄」がほとんどで、仮名では「かうらん」と表記されている。「かう(高)」と「こう(勾)」の発音が区別されなくなった近世以降、中国の文献の影響を受けて日本でも「勾欄」が多くなった。
縁,基壇,階段などの端に設ける装飾と安全を兼ねた手すりで,〈勾欄〉とも書かれる。古語では〈おばしま〉。下から地覆(じふく),平桁(ひらげた),架木(ほこぎ)の横材が斗束(ますづか)に支えられ,斗束の間に平桁を支える栭束(たたらづか)がある。隅や端の納まりによって,親柱をたて上に擬宝珠(ぎぼし)をおく〈擬宝珠高欄〉,親柱を使わず架木先端を長く,平桁と地覆先端をわずかに出す〈組高欄〉,架木先端をそらせる〈刎(はね)高欄〉などがある。階段には登り高欄を用い,昇り口には袖高欄をつける。地覆と平桁間には卍(まんじ)崩し(法隆寺金堂)や横連子(よこれんじ)(薬師寺東塔)などの組子や,幕板(まくいた),彫刻した板を入れるものもある。禅宗様では,親柱に蓮の葉を様式化した逆蓮柱,斗には握蓮(にぎりばす),開口部では架木先端をくねらせた蕨手(わらびて)とする。
高欄は,中国では漢代の画像石や明器の建築にすでにみられ,敦煌壁画のものは親柱には擬宝珠があり,その間の架木上に宝珠飾が据えられる。これは伊勢神宮正殿の高欄にみられる五色の居玉の源流であろう。日本古代の実例では,法隆寺西院伽藍,薬師寺東塔や東大寺法華堂八角仏壇などがある。かんたんなものは家屋文鏡(奈良佐味田宝塚古墳出土)の高床家屋の梯子(はしご)にそえて描かれたものが古い。
石造橋の高欄では,中国隋代の趙県安済橋(605ころ)の高欄が古く,一石でつくられ羽目の彫刻が優れている。韓国では慶州仏国寺多宝塔(751ころ)に石造高欄がみられる。これは石材で木造と同様な構造をつくったものである。
執筆者:沢村 仁
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日本建築で縁や廊下、あるいは橋につく欄干をいう。勾欄(こうらん)とも書く。高欄の横材は上から架木(ほこぎ)、平桁(ひらげた)、地覆(じふく)と3本通り、平桁を通して地覆から架木を支える材を斗束(とづか)、中間で平桁だけを支える材を栭束(たたらづか)という。高欄の隅は、架木、平桁、地覆を組み合わせるものと、親柱(おやばしら)を立てるものがあり、前者を跳(はね)高欄(刎(はね)高欄)、後者を擬宝珠(ぎぼし)高欄とよび、また、階段両脇(わき)につくものを登(のぼり)高欄、入口両脇につくものを袖(そで)高欄とよぶ。
[工藤圭章]
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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