日本大百科全書(ニッポニカ) 「擬金紅石」の意味・わかりやすい解説
擬金紅石
ぎきんこうせき
pseudorutile
チタン鉄鉱の酸化産物として生成された二次鉱物。シュードルチルともいう。かつてアリゾナ石arizoniteという名称でアメリカのアリゾナ州ハックベリーHackberryから1909年記載された相が記載不十分であったため、オーストラリアの南ネプチューンSouth Neptune島産の同一相と思われるものとして再検討された。その結果、1966年に完全な化学的・結晶学的データをもって新鉱物として記載されたもので、化学式は元のままである。花崗(かこう)岩質ペグマタイト中にチタン鉄鉱の表面を蔽(おお)い、その一部を置換して産する。またチタン鉄鉱に富む漂砂(ひょうさ)鉱床(砂鉱)中にも産し、さらに分解が進むと灰黄色粉末状の鋭錐(えいすい)石に変化する。風化の中間過程での産物。命名は金紅石(ルチル)に類似した外観をもつことに由来する。
[加藤 昭 2016年3月18日]