改良服(読み)かいりょうふく

改訂新版 世界大百科事典 「改良服」の意味・わかりやすい解説

改良服 (かいりょうふく)

自然の身体をゆがめるコルセットや帯,過剰な装飾などで形作られた女性の衣服を,活動的に改良したもの。日本では明治以降,女性の社会的進出がみられるようになると,袖が長くお端折りや幅の広い帯などを必要とする活動的でない着物の不便さが指摘されるようになった。《女学雑誌》などで和服洋服かの論争が展開され,〈女らしさ〉の視点からだけでなく衛生などの面からも,帯やコルセットなどが批判された。しかし,洋服の活動性が注目され,〈ペティコート風の下衣をつくれ〉(《女学雑誌》第53号,1887),〈女性にもフランネル股引を〉(同第138号,1888),〈女学生の制服の袖を切り筒袖に〉(同第59号,1887)などの声も出て改良が試みられ,同時に髪形束髪が普及した。1899年実践女学校では,木綿製の細い矢絣に筒袖または短めの元禄袖,長い丈の校衣(制服)が制定されるなど,明治末期から大正にかけて和服にもさまざまな考案がなされたが,一般化しなかった。第2次大戦中に,袖の短い腰丈の着物に下はもんぺという標準服が制定され,日常着となったが,戦後はふたたび従来の着物に戻り,短い丈の茶羽織など個々に改良がなされた。しかし,伝統的な着物の形は現在も変化していない。洋服が日常着として一般化したことから,改良の主目的が解消されたといえよう。

 西欧では,1890年代にサン・シモン主義の影響をうけたアメリカのアメリア・ブルーマー夫人らが,コルセットなどで締めつけた婦人服を,主として健康上の理由から批判し,労働にも不適当だとして改良運動を起こした。その後,改良服はイギリスオランダなどに普及し,オランダでは〈婦人服改良協会〉が設立された。運動のなかで,ウエストや胸をきつく締めない改良コルセット,改良ドレス,ズボンをとりいれたブルーマーズ・スタイルなどがつくられ,子ども服の改良にも目が向けられた。しかし,それらは〈女らしくない〉とされて普及せず,20世紀になってようやく,オート・クチュールのデザイナーらによる機能性を加味したルーズ・ウエストや,テーラード・スーツなどが現れた。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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