改訂新版 世界大百科事典 「放射線モニター」の意味・わかりやすい解説
放射線モニター (ほうしゃせんモニター)
radiation monitor
原子力や放射線の利用を安全に行うため,放射線作業環境および施設周辺環境の放射線レベルや放射性物質による汚染レベルなどを測定し,その結果を検討して放射線防護上の処置に結びつけることを放射線モニタリングといい,放射線量のレベル,汚染レベルのモニタリングに用いる測定器を放射線モニターという。放射線作業者個人の被曝線量の測定評価もモニタリングである。
作業環境では,施設内に固定したエリアモニター,作業者が携行するサーベイ・メーターが用いられる。放射能による汚染のモニター,施設内の空気やダストモニターあるいは手足の汚染をチェックするハンドフットクロスモニターなどがある。施設周辺環境では,環境モニター,排気・排水のモニターなどが用いられる。エリアモニターやサーベイ・メーターは,電離箱,ガイガー=ミュラー計数管,シンチレーションカウンターなどを検出器として用い,線量率で表示している。作業環境の放射線モニターは,放射線場の変化にすばやく応答できることが必要で,時定数を短くしている。放射線のエネルギーに対する感度の依存性(エネルギー依存性)や検出器への放射線の入射方向による感度の依存性(角度依存性)の少ない測定器がサーベイ・メーターやエリアモニターに適している。
施設周辺環境のモニターには,長期にわたる放射線や放射能の変化をみることを目的としており,低レベルの測定が対象となるので,シンチレーションカウンターなど高感度の測定器が用いられている。この目的には熱ルミネセンス線量計などが用いられている。
放射線作業者自身の被曝線量の測定には,フィルムバッジなどの個人モニターが用いられる。この種のモニターは小型軽量であることが必要である。アラームモニター(警報線量計)といって,あらかじめセットした線量に達すると警報音を発し,光が点滅するモニターがある。これは作業衣のポケットにおさまる大きさである。
モニターは放射線安全管理だけでなく,放射線照射を行う場合にも用いられる。あらかじめ基準線量計でモニターを校正しておけば,モニターをたよりにして常に決まった線量を照射することができる。放射性同位体を用いた線源以外の線源で照射実験を行う場合には,このようなモニターが必要である。
執筆者:丸山 隆司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報