日本大百科全書(ニッポニカ) 「フィルムバッジ」の意味・わかりやすい解説
フィルムバッジ
ふぃるむばっじ
film badge
放射線による人体の外部被曝(ひばく)を測定する個人モニタリング用測定器の一種。電離放射線の写真作用によってフィルムを黒化させ、その黒化度から放射線量を測定するもの。一般的にはフィルムと、放射線の種類やエネルギーを弁別するためのフィルターをつけたバッジケースから構成されている。胸部などの身体表面に装着して被曝線量を測定する。X線、γ(ガンマ)線、β(ベータ)線や中性子線などの線種を測定することができる。中性子線の場合、フィルムを直接黒化しないので、たとえば熱中性子線については、フィルターであるカドミウムとの核反応で生成されるγ線による黒化で、また速中性子線についてはフィルム乳剤中に生成される反跳陽子の飛跡によって測定できる。
フィルムバッジは、小型・軽量で強度にすぐれることや現像済みフィルムを保存でき再度読み取り可能といった利点がある反面、放射線によってフィルム乳剤中にできた潜像を目に見える像として固定するための現像操作が必要であること、現像前の潜像の劣化(潜像退行現像)を生じさせる高温多湿環境下での長期間使用には不向きであること、フィルム市場の縮小による製品入手の制限などの難点があるため、熱ルミネセンス現象を利用したTLD線量計、光刺激ルミネセンス現象を利用したOSL線量計、ラジオフォトルミネセンス現象を利用した蛍光ガラス線量計等、フィルムバッジ以外の個人モニタリング用測定器が多用されるようになっている。また、デジタル表示で直読可能、警報機能の付帯も可能なシリコン半導体検出器を使用した電子式線量計も広く利用されている。
[井澤庄治]