人や物が放射線に曝(さら)されることによって受ける被曝(ひばく)の程度を示す概念。被曝量ともいう。人が放射線を受けると、量によっては身体に重大な影響が生じ、一度に大量の放射線を受けると死に至ることもある。また、低線量でもがんなどの晩発影響(遅れて出てくる影響)を起こすことがある。
放射線を表現する量はいくつも定められているが、人体に対する被曝の影響を考えるには、おもに「吸収線量」(absorbed dose)と「実効線量」(effective dose)を用いる。吸収線量は、物体が吸収した単位質量当りの放射線のエネルギー量を示すもので、単位はグレイ(Gy)で表す。しかし、放射線はその種類によって生体への影響度が異なるため、生体への影響の程度をみるためには、吸収エネルギーの物理的な量を示す吸収線量に放射線の種類ごとの生体への影響を考慮した係数(放射線加重係数)を加味して計算する必要がある。さらに被曝した臓器ごとにその影響の度合いを考慮し、これらの影響を全身の平均として評価したのが実効線量である。実効線量の単位はシーベルト(Sv)で表す。低線量の全身被曝では、人体への影響を考慮した実効線量で議論されることが多く、この数値が小さいほど健康への影響やリスクは少ないことを示す。
吸収線量は、人体のそれぞれの場所に当たっている放射線量であり、被曝した人体の体積を考慮していない。また、実効線量は放射線防護のために考案された概念であり、標準的人物を仮定して算出するように設定されていることから、その使用範囲は限定的になる。これらの二つの線量は、被曝した期間や線量率を考慮していないので、他の被曝と比較するときには注意が必要である。
放射線防護のために、国際放射線防護委員会(ICRP)では、1977年に線量の限度(1990年と2007年に改定)を定め、各国に勧告している。日本でもこの勧告に沿う形で、各種法律で線量限度を定めている。
なお、人は通常生活において1年間に世界平均で実効線量約2.4ミリシーベルトの自然被曝を受けるほか、多くの日本人が医療被曝(X線検査やCT検査などの放射線を利用した医療機器による被曝)を受けており、日本人の平均では医療被曝が自然被曝を上回る。たとえば、全身CT検査では1回2.4~12.9ミリシーベルト程度の被曝となる。
[立﨑英夫 2021年11月17日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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