知恵蔵 の解説
放射能汚染の汚泥推奨管理方法
2011年、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故によって放出された放射性物質が降下し、雨水などとともに下水道に流れ込んだ。この結果、関東・東北地方を中心とする広い範囲で、汚泥中に放射性セシウムなどが検出された。汚泥は、従来の受け入れ先への搬出ができないまま、中間処理した脱水汚泥、焼却灰、溶融スラグなどの形で数万トンが処理場に留め置かれ、さらに毎日数百トンのペースで増加している。
検討会によれば、放射性セシウムは汚泥中にとどまり、放流水や焼却施設の排気中にはほとんど検出されなかったという。その一方で、セシウム137(半減期が約30年)などが汚泥に濃縮されて含まれることになり、これを下水処理場内に長期間保管する必要が生じている。「中間とりまとめ」では、施設周辺の住民の被曝(ひばく)が年間1ミリシーベルトを超えないよう、1時間当たりでは0.1マイクロシーベルト以下に制限する必要があるとし、制限を達成するための具体例も示された。
中間処理した汚泥は袋状の入れ物(フレキシブル・コンテナ)に詰めて一時保管することが多い。1キログラム当たり10万ベクレルの放射能を持つ汚泥を、このコンテナに詰めて並べ、縦横2メートル、長さ50メートルにわたって集積した場合、民家から50メートルの距離があれば遮蔽(しゃへい)なしでも、周辺住民について制限値の達成が可能だという。また、処理場の作業者については1時間当たりの被曝を1マイクロシーベルト以下にするものとした。この達成には、同様のコンテナ集積状態で10メートル以上の距離を保つか、20センチメートル以上のコンクリートもしくは5センチメートル以上の鉄板で遮蔽するなどの方策が示された。なお、保管した汚泥を今後どうするのかについては、汚泥からの放射性セシウムの分離除去なども含めて課題として残されている。
(金谷俊秀 ライター / 2011年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報