政治将校(読み)セイジショウコウ

デジタル大辞泉 「政治将校」の意味・読み・例文・類語

せいじ‐しょうこう〔セイヂシヤウカウ〕【政治将校】

独裁体制を敷く政党が、軍を統制するために部隊などに派遣した将校。軍組織に属さず、戦略戦術に必ずしも明るくないが、党からの監視役として、一般の将校らに優越する権限をふるった。旧ソ連での例が代表的。
[補説]フルシチョフブレジネフらも第二次世界大戦中、この任務にあたった。

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改訂新版 世界大百科事典 「政治将校」の意味・わかりやすい解説

政治将校 (せいじしょうこう)

ソ連邦共産党が軍を指導するために,軍隊内に設置した政治部に勤務する将校をいう。ロシア革命直後の1918年,軍事革命委員会が赤軍の部隊,艦艇,機関,学校等に軍事委員voennyi komissarを派遣したのが初めであり,軍の命令は軍事委員の署名がなければ実行されないなどの権力を持っていた。軍事委員はいったん廃止されたが1937年復活し,42年単一指揮官制が確立されてふたたび廃止された。

 1980年代初めの旧ソ連軍の最高政治組織は陸海軍政治総本部で,党中央委員会の下部組織であると同時に国防省の一部でもあった。陸海軍政治総本部の地方組織として軍管区,軍集団,軍,艦隊には政治本部politupravlenieが置かれ,師団,学校,施設にも政治部politotdelがあり,連隊大隊,ときには中隊にも政治担当指揮官代理が置かれた。また軍事会議voennyi sovetが軍管区,軍集団,軍,艦隊に設けられ,軍の施策を審議し軍事訓練と政治教育に全責任を負うものとされていたが,軍事会議のメンバーは司令官と政治本部長であり,政治本部長の署名がなければ軍の命令が実行されなかった。これら政治組織の長は部隊指揮官の指揮下にあるものの,政治総本部の指令によって行動し,政治部は兵,士官の行動,思想を監視するばかりでなく,これを指導するなど強大な権力を有しており,かつての軍事委員ほどの権力はもたないが指揮官の権限を制約するものであった。軍隊内の党政治組織はソ連のみならず他の共産圏諸国にもあった。中国は軍区司令員と並列で政治部主任がおり,下級部隊にもこれに準じて指揮官と並ぶ政治将校がいる。朝鮮民主主義人民共和国にも同様な組織が存在する。
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