19世紀末に,A.マーシャルらによって,科学的なるものという意味をこめて経済学がエコノミックスeconomicsとよばれるようになるまでは,英語圏においては経済学的な研究を総称してポリティカル・エコノミーつまり政治経済学とよんでいた。この呼称を最初につくったのは,17世紀フランスのA.モンクレティアンだといわれている。“ポリティカル”という形容は,研究の関心が国家をはじめとする公共団体の政策の問題にそそがれるということを含意している。政治経済学のドイツ語訳であるシュターツビッセンシャフトStaatswissenschaftつまり国家学という呼称がこのことをより端的に表している。またエコノミックスの語源がギリシア語のオイコス・ノモスつまり家政の法というところにあるということも,経済学が政策の問題と密接にかかわって発展してきたことを物語っているといえる。
しかし,19世紀の前半において自由主義的な経済活動がイギリスを中心にしてひろがるにつれ,経済政策への積極的関心がしだいに失われていき,それに対応して,政治経済学も“法則”の究明をめざす科学として性格づけられるようになった。エコノミックスという呼称は,そうした性格づけをより鮮明にしようとするものである。しかし,経済法則なるものがあるとするためには,経済過程を他の社会的過程から分離されたものとみなさなければならない。このような見方は適切でないとする反対論がある。たとえばマルクス派の一部は,経済過程と政治過程とがとくに独占の問題をめぐって密接に関連しているとみなし,この点を強調するために政治経済学という呼称のほうを選ぶ。また,ケインズ派の大勢も,市場の自動調整機能が阻害された状況にあっては政府の継続的な介入が必要だと考えるのであり,その実践的姿勢において政治経済学に傾いている。さらには,近年,公害問題,都市問題,所得分配問題などのいわゆる公共的諸問題が深刻になりつつあり,経済学がこれらの解決に寄与するためには,価値判断を明示したり政策的な実行可能性について,より現実的な検討を加えたりすることが要請されている。このような新たな動きも,おおまかにいえば,政治経済学の復興の気運を助長しているといえる。しかし,このような動きには経済学を単なる政策技術学に矮小化する危険がともなっている。この危険を防止するには,経済過程と他の社会的過程とのかかわりについての総合的研究が促進されなければならないと考えられつつある。
→経済学
執筆者:西部 邁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…ところが〈economy〉はこれにとどまらず,17世紀以降の絶対王政,近代国民国家の形成過程において物質的な豊かさを柱とする国力の増強が各国の主題となるにおよび,物質的・唯物的要因を中心とする概念に固まっていった。この時期に形成されたpolitical economy(経済学)は唯物的な意味での国富についての学である。〈economy〉はもうひとつ,個人個人,しかもひとりの人の個々的な行為を単位とする規定にも分化した。…
※「政治経済学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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