知恵蔵 「新南極観測船しらせ」の解説
新南極観測船しらせ
全長(138メートル)、最大速力(19.5ノット)、乗員数(約180名)など、船体規模や基本性能は「旧しらせ」と同程度だが、砕氷性能・環境保護・輸送効率などの面で、最新の技術が採り入れられている。とりわけ力を入れているのが、海洋の汚染防止を主眼とする環境対策。ハイテクエコシップとして、事故による燃料漏れを防ぐため、燃料タンクを二重に覆い、衝突による塗装のはがれを防ぐため、外装には新素材のステンレス鋼を採用している。また、船内には浄化装置を設け、生活用水はすべて浄化した後、海へ流す。荷役の面では、フォークリフトや大型エレベーターの設置、南極観測船としては初となるコンテナの導入によって、輸送の効率化をはかっている。
南極観測船の主要な役割は、昭和基地への隊員・物資の輸送および海洋・海底地形の観測である。昭和基地との往復は、年に1度。観測船の建造・所管は文部科学省が担うが、実際の運用は防衛省(海上自衛隊)が行う。乗組員も海上自衛官。また船舶の呼称も、一般には「南極観測船」で通っているが、防衛省は「砕氷艦」と位置づけている。
(大迫秀樹 フリー編集者 / 2009年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報