日本大百科全書(ニッポニカ) 「新型転換炉」の意味・わかりやすい解説
新型転換炉
しんがたてんかんろ
原子炉の炉型の一つ。発電用の熱中性子炉のなかで、転換率の高い、中性子の利用効率のよい原子炉をいう。原子炉の中で核分裂性物質が消費される一方、親物質が中性子を吸収して核分裂性物質に転換される。この割合を転換比というが、軽水炉の場合には0.6、増殖炉の場合には1よりも大きい。新型転換炉では、軽水炉と増殖炉の中間の値を示す。
動力炉・核燃料開発事業団(動燃)が開発した新型転換炉は、沸騰軽水冷却型重水炉で、「ふげん」と名づけられ、1979年(昭和54)から2003年(平成15)まで運転した(動燃は1998年9月に解団し、同年10月核燃料サイクル開発機構が事業を継承。2005年10月より核燃料サイクル開発機構と日本原子力研究所が統合して発足した日本原子力研究開発機構が管理)。これは電気出力16.5万キロワットの原型炉である。この原子炉は軽水炉の炉心構造と大きく異なり、減速材の重水タンクの中に224本の圧力管が24センチメートルの格子間隔で垂直に配置され、その中に28本の燃料棒で構成された燃料集合体が収められた。燃料棒の被覆管は、軽水炉と同じくジルカロイであった。
燃料は、微濃縮ウラン、あるいはプルトニウム富化天然ウランが用いられる(再処理回収ウランや劣化ウランも利用される)。冷却材の温度は軽水炉の場合よりも低く、炉入口温度277℃、炉出口温度284℃である。圧力は約68気圧である。「ふげん」の特徴は、転換比が高く、また燃料としてプルトニウム239が使えることにあった。軽水炉の使用済み燃料を再処理してプルトニウムを抽出しても、いまのところ利用法がない。一つの利用法は軽水炉にリサイクルすること、他は「ふげん」のような新型転換炉で積極的に燃やすことである。新型転換炉は、軽水炉と高速増殖炉のつなぎの役目を果たす原子炉と位置づけられてきたが、経済性をあげることができなかったため、原型炉までで開発を中止した。
[桜井 淳]