プルサーマル(英語表記)plutonium burning in thermal reactor

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プルサーマル」の意味・わかりやすい解説

プルサーマル
plutonium burning in thermal reactor

現在稼働している原子力発電所の軽水炉ウラン燃料プルトニウム燃料を混ぜて利用すること。プルサーマルとは,プルトニウムとサーマルリアクター (→熱中性子炉 ) からの造語。使用済み核燃料を再処理して燃え残ったプルトニウム 239を取り出し,酸化物として4~9%をウラン酸化物と混合した MOX (mixed oxide) 燃料に加工し,通常のウラン燃料と同様に軽水炉で利用する。プルトニウムはウランに比して熱中性子を吸収しやすいため,制御棒の効果が若干減少するが,MOX燃料が全体の3分の1程度までの装荷ならば現在の安全設計の範囲内とされている。核燃料サイクル構想では,プルトニウムを高速増殖炉の燃料として利用することを想定しているが,その実用化までのプルトニウム利用法となっている。 1963年にベルギー実施されたのが最初で,ドイツ,フランス,スイスなどでの実施例がある。日本では,高速増殖炉の実用化が遅れその見通しがつきにくいこと,核不拡散の観点から余剰プルトニウムをなるべく持たないようにすべきであることの一方で,再処理によるプルトニウムが大量に生じてきたことからプルサーマルの実施が計画され,1997年,政府の核燃料サイクルに関する決定でプルサーマル実施への方向性が決められた。しかし,プルトニウムの処理法としては効率がよいとはいえないうえ,安全性への疑問,核燃料サイクル全体の経済効率などの問題から実施を疑問視する意見もある。

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