大学事典 「新時代の大学院教育」の解説
新時代の大学院教育(中央教育審議会答申)
しんじだいのだいがくいんきょういく
2005年の中央教育審議会答申で,副題が「国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて」とされている。本答申の題目には,大学院関係の審議会答申としては初めて,大学院に教育の語が付され,「大学院教育の実質化」の標語のもとで,大学院における組織的な教育の必要が強く意識されたことが示されている。さらに本答申は,同年1月の大学院を含む高等教育全般に対する答申「我が国の高等教育の将来像」に「国際的通用性のある大学教育または大学院教育の課程の修了に係る知識・能力の証明としての学位の本質を踏まえつつ,今後は,教育の充実の観点から,学部や大学院といった組織に着目した整理を,学士・修士・博士・専門職学位といった学位を与える課程中心の考え方に再整理していく必要があると考えられる」として,日本の大学院制度特有の欠陥を正す必要が提起されたことを受けて審議された点で画期的であった。しかし,この答申で,当該の問題を検討する際には「学士,修士,博士のそれぞれに係る課程の在り方や相互関係,大学,大学院,学部といった法令上の用語の使われ方の再整理等も視野に入れつつ,検討が進められていくことが望まれる」と意識されながらも先送りされ,実質的な画期性はもちえなかった。
著者: 舘 昭
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報