大学事典 「新構想大学」の解説
新構想大学
しんこうそうだいがく
1970年代から80年代にかけて,新しい構想のもとに設立された国立大学(新構想)群。戦後改革で生まれた講座を基礎に学部教授会自治を軸とした新制国立大学は,その閉鎖性や学問的停滞などの問題を抱え,さらに1960年代から70年代にかけての大学紛争を自力で解決できず管理体制の不備を露呈した。こうした状況下で,在来線に対する新幹線敷設の発想で唱えられたのが「新構想大学論」で,1973年(昭和48)の学校教育法・国立学校設置法・教育公務員特例法の一括改正,いわゆる「筑波大学法」の成立によって法的に可能となり,同年の学長権限を強化して学部教授会を置かず,学群・学系制をとって学術の新規性と社会への公開性を謳う筑波大学の設置によって現実のものとなった。
その後,1974年以降に一県一医大政策に基づき設置された11の単科の国立医科大学,76年設置の高等専門学校に接続する形で設計された二つのdgjt611.m32技術科学大学,78年と81年に設置された現職教員対象の大学院を中心とする三つの新教育大学,88年から97年にかけて設置された四つの大学院大学や,79年設置の図書館情報大学,81年設置の鹿屋体育大学,87年設置の筑波技術短期大学の三つの特殊な分野の単科大学,83年設置の放送大学および同年に日本版コミュニティ・カレッジのモデル校として設置された高岡短期大学が,管理体制の強化や新分野の開拓および公開性の強化などにおいて新構想大学の範疇に入る。しかし,在来線に対する新幹線ほどの投資が新構想大学にはなされておらず,既存大学に並立する存在になっているわけではない。その先導性は既存の大学に影響を与えつつも,現在,既存大学側の改革の進行や行政改革にともなう合併の渦のなかで,新構想の意味づけが問い直されている。
著者: 舘 昭
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報