新生児出血性疾患

内科学 第10版の解説

新生児出血性疾患(凝固線溶系の疾患各論)

概念
 新生児期に発症する出血症の総称で,先天性と後天性がある.
病因・分類
 病因により,①血小板の減少および機能異常症,②凝固因子および線溶制御因子の欠乏および異常症,③血管の異常症(先天性と後天性),④前三者の複合的異常,に大別される.その中で,血小板減少症,急性胃粘膜病変,ビタミンK欠乏症,播種性血管内凝固症(DIC),脳室内出血の頻度が比較的高い.
病態生理
1)血小板数:
新生児の血小板数は在胎28週以降では,おおむね成人の正常範囲にある.新生児の骨髄巨核球は,血小板減少に伴う反応が不十分で,血小板の粘着能や凝集能も弱い.
2)凝固因子・凝固抑制因子:
正期産児においては,ビタミンK依存性凝固因子(凝固第Ⅱ,Ⅶ,Ⅸ,Ⅹ因子,プロテインC,プロテインS)は,成人レベルに達していないが,フィブリノゲンや凝固第Ⅴ因子や第Ⅷは成人レベルに達している.
3)血管:
早産児の脳室内出血は,脳の血管構築の特性と脆弱性が主因と考えられている.Kasabach-Merrit症候群では,血管内凝固亢進が主因である.
疾患各論
1)血小板減少症・機能異常症:
出血部位の多くには皮下出血(紫斑)で,注射部位の止血困難もみられる.
 新生児期に特徴的な血小板減少症として,活動期の特発性血小板減少性紫斑病(ITP)や全身性エリテマトーデス(SLE)の罹患母体からの新生児にみられる一過性血小板減少症(新生児ITPともよばれる)と,母児間の血小板型(一部は白血球型)不適合による同種免疫性新生児血小板減少症がある.前者は母体が産生した抗血小板抗体(IgG)が胎盤を経由して胎児に移行し,胎児・新生児の血小板を減少させるものである.同種免疫性新生児血小板減少症は,30%以上が頭蓋内出血を起こし重篤であるが,欧米と比べてわが国での頻度は低い.母体の薬物服用(サイアザイド系利尿薬による減少症やアスピリンなどによる機能低下症)や新生児への薬物投与により,減少症や機能異常症が発症する.近年,血漿中のUL-VWFM(unusual large von Willebrand factor Multimer)により血小板凝集が生じるUpshaw-Schulman症候群が,ADAMTS13(a disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motifs 13)の先天性欠損によることが証明された.治療はFFPの投与で血小板輸血は禁忌である(Fujimuraら,2011).
2)凝固因子欠乏症:
新生児は分娩時以外に外傷を被る機会が少ないので,血友病などの先天性凝固因子欠乏症が新生児期に発症することは頭蓋内出血を除いてまれである.例外は,先天性無フィブリノゲン血症,先天性第ⅩⅢ因子欠乏症,先天性α2プラスミノーゲンインヒビター欠乏症で,いずれも8割以上が臍出血で発症する.治療は各因子の補充あるいは新鮮凍結血漿(FFP)の投与である.後天性の凝固因子欠乏症は,おもに肝臓の未熟性によるビタミンK依存性凝固因子の低下により発症する.多くは消化管出血で,吐血と下血である.
3)播種性血管内凝固症(DIC):
新生児は生理的に凝固因子と凝固制御因子が低下している.さらに,アシドーシス,低酸素血症,末梢循環不全,感染症など,血管内凝固亢進を引き起こす病態に陥る危険性が高く,DICを起こしやすい.基礎疾患としては,低酸素血症,感染症,消化管穿孔,出血が多い.また体重が小さく在胎週数が若いほど発症しやすい.DICの治療は,基礎疾患に対する治療に加えて,抗凝固療法(蛋白合成酵素阻害薬:アンチトロンビン製剤,ヘパリン)および補充療法(FFP,血小板輸血)であるが,重症例ではサイトカインやエンドトキシンなどの除去と凝固因子の補充などの点から,交換輸血が第一選択である.なお,抗トロンビン作用とプロテインC活性化作用をもつトロンボモジュリン製剤が,DIC治療薬として保険適応になった(丸山,2011).新生児領域では使用経験が少ないが,今後使用が増すと考えられる.[西久保敏也・嶋 緑倫]
■文献
Fujimura Y, Matsumoto M, et al: Natural history of Upshaw-Schulman syndrome based on ADAMTS13 gene analysis in Japan. J Thromb Haemost, 9 Suppl 1, 283-301, 2011.
丸山征郎:DIC治療の新しい展開 リコンボモジュリン製剤の登場 DIC治療の新しい展開 リコンビナントトロンボモデュリン製剤の登場.日本検査血液会誌,12
, 71-79, 2011.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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