文学運動団体。プロレタリア芸術運動団体〈ナップ〉の文学部が,1928年12月〈ナップ〉の改組に伴い,独立して日本プロレタリア作家同盟として結成されたもの。〈ナップ〉を構成する各領域のプロレタリア芸術団体のうちの中心的な部分となり,また,労農芸術家連盟(文芸戦線派)の社会民主主義的傾向に対立して共産主義文学運動の立場をかかげ,明治以来の絶対主義支配の圧倒的な重圧のなかで,ラディカルな文学闘争を展開してプロレタリア文学運動のヘゲモニーを握った。機関誌《戦旗》《ナップ》誌上を中心にはげしい論争を通して従来の文壇的な文学観念や理論を批判し去り,プロレタリア文学の創作方法理論,芸術運動理論を深化し,また革命文学のすぐれた作品と新しい個性をつぎつぎと提示し,これらによって日本の進歩的文学と大衆との結びつきをひろげるとともに,文壇をゆり動かして一時それにとって代わる勢いをさえ示した。おもな作家,批評家は蔵原惟人,中野重治,窪川鶴次郎,壺井繁治,佐多稲子,江口渙,藤森成吉,林房雄,小林多喜二,徳永直,立野信之,橋本英吉らで,黒島伝治,宮本顕治,宮本百合子らものちに加わった。〈ナップ〉が〈コップ〉(日本プロレタリア文化連盟)に改組されたのちも〈コップ〉の中心的団体として機能し,また〈コップ〉の各機関誌と別に,同盟独自の機関誌《プロレタリア文学》(1932-33)を刊行したが,当時の日本共産党の戦略とも関連して生じていた運動方針上の誤りや未成熟のために,満州事変下の加重した弾圧のなかで34年3月に声明を発して解散した。はじめ〈作同〉と略称していたが,1932年2月国際革命作家同盟(モルプ)に加盟してその日本支部となるとともに〈ナルプ(NALP)〉と略称を定めた。解散後は同盟員はグループに分かれ,それぞれの雑誌を出して活動をつづけた。
執筆者:小田切 秀雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
文学団体。ナップ文学部が全日本無産者芸術団体協議会の傘下団体として独立し、1929年(昭和4)2月創立。略称は作同、32年2月国際革命作家同盟加盟以後はNALP(ナルプ)。非合法の日本共産党を支持する文化・芸術団体のうちもっとも有力な組織として活躍し、評論、実作、運動の諸分野を通して革命と文学の統一という問題を提起し、文学界、思想界に衝撃を与えた。中心メンバーには蔵原惟人(これひと)、小林多喜二(たきじ)、中野重治(しげはる)、中条(宮本)百合子(ゆりこ)らがいる。コップ(日本プロレタリア文化連盟)に加盟以後、機関誌『プロレタリア文学』(1932.1~1933.10)を刊行したが、激しい弾圧と加盟員の転向や敗北的潮流を阻止できず、34年2月解散。
[祖父江昭二]
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